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Every Little Thing
- 作曲: LENNON JOHN WINSTON, MCCARTNEY PAUL JAMES

Every Little Thing - 楽譜サンプル
Every Little Thing|歌詞の意味と歴史
基本情報
Every Little Thingは、レノン=マッカートニー名義の作品で、ザ・ビートルズのUKアルバム『Beatles for Sale』(1964年)に収録。米国では『Beatles VI』(1965年)に収められた。プロデュースはジョージ・マーティン、録音はロンドンのEMIスタジオで1964年に行われた。アコースティック主体のサウンドにエレキのリード、ピアノ、さらにティンパニのアクセントが加わるアレンジが特徴で、リード・ボーカルはジョン・レノンが務め、ポール・マッカートニーのハーモニーが曲の温度感を支えている。シングル化はされていないが、アルバム内で存在感のあるポップ・チューンとして位置づけられる。
歌詞のテーマと意味
タイトルが示す通り、相手がしてくれる「ささやかなすべて」を愛おしむ感謝の歌である。語り手は日常の小さな行為の積み重ねに大きな幸福を見いだし、相互信頼と安定した関係への確信を表明する。初期ビートルズの恋愛曲に見られる明快さを保ちながらも、自己中心的な欲求ではなく、相手の気遣いを受け止める成熟した視点が強調されている。対句的に反復されるフレーズ構造とコーラスの高揚感が、感謝の念を自然に増幅させ、メロディの上昇とパーカッシブなアクセントが「気づき」と「喜び」の瞬間を象徴的に照らしている。
歴史的背景
1964年のビートルズはツアーと制作が過密で、アルバム『Beatles for Sale』全体には疲労感や内省がにじむと言われる。その中でEvery Little Thingは、親密で穏やかなラブソングとしてアルバムの感情的バランスを保つ役割を果たした。スタジオでは当時としては珍しいティンパニが導入され、ジョージ・マーティンのプロデュースの下、ポップ・ソングの範疇に小規模なサウンド・スケールの拡張を施している。過剰な装飾に頼らず、ボーカルの重ねとリズムのダイナミクスでドラマ性を獲得した点は、後年のスタジオ志向の萌芽としても注目される。
有名な演奏・映画での使用
ビートルズ自身による本曲の代表的な公式ライブ演奏は情報不明。注目すべきカバーとしては、イエス(Yes)が1969年のデビュー・アルバムで取り上げ、序盤に拡張的なイントロを配したアレンジで原曲の旋律美をプログレ的に再解釈している。ほかにも多くのアーティストが録音を残しているが、映画やテレビでの特筆すべき使用例については情報不明である。アルバム曲ながら、カバーの蓄積を通じてソングライティングの堅牢さが検証され続けている点は重要だ。
現代における評価と影響
派手なヒット曲に比べ語られる機会は少ないが、批評ではしばしば「隠れた佳曲」として評価される。素朴な感謝を軸に置いたリリック、コーラスの緊密なハーモニー、控えめながら効果的な打楽器のアクセントが、初期ビートルズのポップ感覚と編曲の工夫を端的に示すからだ。楽曲構造の簡潔さはカバーに適し、ロックからポップ、プログレまで幅広い再解釈を可能にした。結果として、本曲は「ソングライティングそのものの強度」が時代やスタイルを超えて通用することを示す好例となっている。
まとめ
Every Little Thingは、日常の小さな喜びを大切にする眼差しを、明快なメロディと気品あるアレンジで結晶化したポップ・ナンバーである。アルバム曲ゆえに目立ちにくいが、制作期の空気とスタジオでの工夫、そしてカバーに耐える骨格を併せ持つ本作は、ビートルズの創作力の広がりを知るうえで欠かせない1曲だ。