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Dear Prudence
- 作曲: LENNON JOHN WINSTON, MCCARTNEY PAUL JAMES

Dear Prudence - 楽譜サンプル
Dear Prudence|歌詞の意味と歴史
基本情報
1968年発表、ビートルズの通称ホワイト・アルバムに収録された楽曲。作曲者表記はLennon–McCartneyだが、リード・ボーカルはジョン・レノンで、作風も彼の色合いが濃い。穏やかなテンポと指弾きのギターから始まり、曲が進むにつれてパーカッションやコーラスが重なっていく構成が特徴。レコーディングでは、一時的にバンドを離れていたリンゴ・スターに代わり、ドラムをポール・マッカートニーが担当したことでも知られる。
歌詞のテーマと意味
タイトルに登場する“プルーデンス”は実在の人物で、瞑想修行に深く没頭して部屋にこもりがちだった彼女に、外の世界の光や自然の美しさを一緒に楽しもうと優しく呼びかける内容。命令ではなく思いやりに満ちた誘いかけが繰り返され、孤立から解放へ向かう心の動きを描く。恋愛を直接語るものではなく、人への配慮や共感、静かな励ましが中心テーマとなっている。
歴史的背景
楽曲は1968年、メンバーがインドで瞑想の合宿に参加していた時期の体験に着想を得ている。プルーデンス・ファロー(女優ミア・ファローの妹)が瞑想に没頭してほとんど姿を見せなかった出来事が発端とされ、ジョンは彼女を気遣う気持ちを歌に昇華した。インド滞在で磨かれた繊細な指弾きと、当時のサイケデリック期からフォーク寄りへ移行するムードが、楽曲全体の空気感に結び付いている。
有名な演奏・映画での使用
1983年にはシオクシー・アンド・ザ・バンシーズがカバーし、英国チャート上位に入るヒットとなった。ジェリー・ガルシア・バンドなど、ライブの定番として取り上げるアーティストも多い。映画では、ザ・ビートルズ楽曲を全編で再解釈した『アクロス・ザ・ユニバース』(2007)で、登場人物によるカバーが劇中歌として用いられている。
現代における評価と影響
ホワイト・アルバムの中でも流麗なアレンジと温かなメッセージ性で評価される一曲。ミニマルな導入からクライマックスへ段階的に厚みを増すダイナミクス設計は、後続のフォーク・ポップやインディ・ロックにも通じる手法として参照されてきた。静けさと高揚を両立させるプロダクションは、今日でも録音・編曲の教材として語られることが多い。
まとめ
Dear Prudenceは、個人への思いやりを普遍的な希望へと昇華させたビートルズ流の名品である。優しい呼びかけ、手触りのあるギター、少しずつ開いていく音の景色が相まって、1960年代の文脈を越えて聴き継がれている。歌詞の全文を引用せずとも伝わる温度感と、事実に裏打ちされた背景が、今なお多くのリスナーを惹きつけてやまない。