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Yer Blues

  • 作曲: LENNON JOHN WINSTON, MCCARTNEY PAUL JAMES
#ビートルズ#洋楽ポップス
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Yer Blues - 楽譜サンプル

Yer Blues|歌詞の意味と歴史

基本情報

Yer Bluesは、ビートルズの1968年作『ザ・ビートルズ(通称ホワイト・アルバム)』収録曲。作詞作曲はレノン=マッカートニー名義だが、中心となったのはジョン・レノン。ロンドンのEMIスタジオで録音され、バンドはスタジオ2の小部屋に集まってほぼ一発録りで荒々しい質感を追求した。ヴォーカルはレノン、ギターはレノンとジョージ・ハリスン、ベースはポール、ドラムはリンゴ。演奏時間は約4分。

歌詞のテーマと意味

タイトル通りブルースの語法を借りつつ、レノンが名声の渦中で抱えた孤独、自己嫌悪、死への衝動までをむき出しにする。ジャンルのパロディとして始まりながら、吐露は本気で、笑えないほど暗い。平易な言葉と反復で焦燥を積み上げ、バンドの荒い伴奏と相まって“密室の独白”のような切迫感を生む。誇張されたブルース・トロープを使いながら、当時のロック・スター像をも皮肉る二重構造が特徴だ。

歴史的背景

1968年春、メンバーはインドでの瞑想研修に参加。レノンはそこで逆説的に孤立感を強め、この曲の着想を得たと語っている。英米ではブルース回帰の潮流が高まり、若いロック・バンドが泥臭い音像へ回帰した時期でもあった。バンド内部は緊張が高まりつつも、録音現場では互いに近距離に身を寄せ“ライヴ感”を優先。クリアさより圧迫感を選ぶ判断が、作品の核心を成している。

有名な演奏・映画での使用

1968年12月のテレビ特番『The Rolling Stones Rock and Roll Circus』で、レノンはエリック・クラプトン、キース・リチャーズ、ミッチ・ミッチェルと結成したザ・ダーティ・マックで披露。さらに1969年のトロント公演でもプラスティック・オノ・バンドが演奏し、楽曲の独立した生命力を示した。映画での顕著な使用例は情報不明だが、上記映像は後年公式に公開され広く視聴されている。

現代における評価と影響

今日『Yer Blues』は、ビートルズ屈指のヘヴィでラフなトラックとしてしばしば言及される。12小節ブルースを土台にしながら、ダブルトラックのヴォーカル、ツイン・ギターの刺々しい掛け合い、崩れ落ちるような展開が、ハード・ロックやオルタナ以降の感性にも響くと評価される。制作の即物的な質感は、過度に整えない録音美学の先駆例としても参照されている。

まとめ

模倣と本音、伝統と逆説が同時に鳴る稀有な一曲。スタジオの物理的“狭さ”を音楽的な緊張に転化し、レノンの内面を剥き出しに固定した。ホワイト・アルバムの多面性を象徴し、半世紀を経てもなお生々しさを失わない。