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It's All Too Much

  • 作曲: HARRISON GEORGE
#ビートルズ#洋楽ポップス
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It's All Too Much - 楽譜サンプル

It's All Too Much|歌詞の意味と歴史

基本情報

「It's All Too Much」は、ジョージ・ハリスンが作詞作曲したビートルズの楽曲。1967年に録音され、1969年にアルバム『Yellow Submarine』で公式発表された。1968年公開のアニメ映画『イエロー・サブマリン』にも使用され、作品世界のサイケデリックな映像と響き合う代表曲として知られる。長尺の構成、厚いオルガンとギターのレイヤー、強烈なリバーブやフィードバックが特徴で、歌詞を伴うサイケデリック・ロックのポップ・ソングに位置づけられる。

歌詞のテーマと意味

タイトルが示す「すべてが強すぎる」という感覚は、圧倒的な喜びや感謝、世界認識の拡張を肯定的に捉える視点と結びつく。語彙やイメージは光、愛、祝祭性を呼び込み、反復によるマントラ的な効果が高揚感を生む。既存曲の一節を引用するポップ・コラージュ的手法も用いられ、当時の文化的連関を映し出す。全体として、個人の内的覚醒と普遍的な肯定を結ぶメッセージが核にあり、抽象度の高い言葉が多義的な解釈を許すため、聴き手それぞれが自分の体験に重ねやすい構造になっている。

歴史的背景

本作は『Sgt. Pepper’s』期の実験精神が色濃い1967年に録られ、スタジオ技術の拡張が大きな役割を果たした。ラウドなギター、持続音的ドローン、分厚いオルガン、金管・木管の色彩が渾然一体となり、当時のロンドン・サイケデリアの潮流を体現するサウンドを形成。制作は映画『イエロー・サブマリン』関連の楽曲供出とも連動しており、録音から発表までのタイムラグはプロジェクト上の事情による。結果として、1969年のアルバムに収録される形で広く認知された。

有名な演奏・映画での使用

ビートルズ自身の公式なライブ演奏記録はないが、映画『イエロー・サブマリン』ではクライマックス付近で用いられ、万華鏡的な映像とともに楽曲の陶酔感を強調した使われ方で印象を残した。カバーでは、Steve Hillageがアルバム『L』で取り上げ、サイケ/プログ・ギターの文脈で再解釈。The Churchなどオルタナ/ネオ・サイケ勢にもカバー例がある。さらに1999年の『Yellow Submarine Songtrack』では新しいミックスが登場し、音像の鮮明化と長尺感の再評価に繋がった。

現代における評価と影響

今日では、ハリスンの作家性が一気に開花したサイケ期の重要曲として位置づけられることが多い。長いフォームと反復的グルーヴは、後年のドローン志向やシューゲイズ、ネオ・サイケの美学とも共鳴し、プロダクション面の実験性は現代のスタジオワークにも示唆を与える。映画との結びつきが強い楽曲であることから、映像と音楽の相互強化の好例としても言及され、再発や配信環境の整備により若い層の再発見も進んでいる。

まとめ

「It's All Too Much」は、ビートルズのサイケデリック期を象徴しつつ、ジョージ・ハリスンのスピリチュアルで肯定的な視座を鮮やかに刻んだ一曲である。映画との相乗効果、長尺サウンドの没入感、文化的引用の妙が重なり、半世紀を経ても新鮮な発見を促す。史的文脈と音の快感が共存する、再聴に値する重要作だ。