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I Me Mine
- 作曲: HARRISON GEORGE

I Me Mine - 楽譜サンプル
I Me Mine|歌詞の意味と歴史
基本情報
『I Me Mine』は、ジョージ・ハリスン作曲によるビートルズの楽曲。1970年発表のアルバム『Let It Be』に収録され、同年1月、ロンドンでハリスン、マッカートニー、スターの三人によって正式録音された。ジョン・レノンはセッションに不参加。のちにフィル・スペクターがストリングス等を加え、曲尺を延長したアルバム版が完成している。ワルツの趣とロックの推進力を併せ持つ構成が特徴。
歌詞のテーマと意味
タイトルの「I/Me/Mine」は英語の一人称を並べた表現で、自己中心性やエゴへの執着を風刺する。ハリスンが傾倒した東洋思想や無我の観念が背景にあり、内省と諧謔が同居する。ワルツ調のAセクションと歪んだロック調のBセクションの対比は、静かな観照と自己主張の高ぶりを象徴的に描き出している。歌詞の全文引用は省略し、要点として「エゴの連呼」がテーマ化される点を押さえたい。
歴史的背景
本曲は1969〜70年の“Get Back/Let It Be”制作過程で生まれ、映画『Let It Be』のリハーサル場面にも登場する。1969年秋に事実上脱退したレノン不在のまま、1970年に三人で再録音されたことから、ビートルズ最終期の状況を映す重要作と評される。また、アルバム制作ではスペクターの編集方針が議論を呼び、後年の再編集版へと論争が継承された。曲はバンドの終幕期の空気感を端的に伝える。
有名な演奏・映画での使用
公式基準は『Let It Be』収録版だが、2003年の『Let It Be... Naked』ではオーケストレーションを排した別ミックスが公開され、楽曲の骨格と演奏の密度がより明瞭に示された。映画『Let It Be』(1970)ではリハーサル映像として登場し、ピーター・ジャクソン監督の『The Beatles: Get Back』(2021)でも制作過程の様子が確認できる。代表的カバーの情報は情報不明。
現代における評価と影響
ハリスンの精神性と皮肉を凝縮した小品として、批評家・研究者から安定した評価を得る。ハリスン自身の自伝タイトル『I, Me, Mine』(1980)にも転用され、曲が示すエゴ批判の主題は彼の作家性を象徴するものとして語り継がれている。ビートルズ終盤の創作態度やプロデュース論争を理解する手がかりとしても参照され、今日ではオリジナル版と別ミックスを聴き比べる研究・鑑賞が一般的になっている。
まとめ
『I Me Mine』は、端正なメロディと構成、そして自我への鋭いまなざしで、ビートルズ最終期を象徴する一曲となった。録音事情やミックスの違いは、作品の意味と受容を左右する重要要素でもある。初めて聴くなら『Let It Be』と『Let It Be... Naked』を対比し、演奏の質感とメッセージの核を確かめることで、楽曲の多面性をより深く味わえるだろう。