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Dig It

  • 作曲: LENNON JOHN WINSTON, MCCARTNEY PAUL JAMES
#ビートルズ#洋楽ポップス
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Dig It - 楽譜サンプル

Dig It|歌詞の意味と歴史

基本情報

Dig Itは、ビートルズが1970年に発表したアルバム『Let It Be』収録曲。約50秒という異例の短さで、長尺の即興ジャムから抜粋・編集された断片として知られる。録音は1969年1月、ロンドンのアップル・スタジオで行われ、バンドに客演したBilly Prestonが鍵盤で参加。プロデュースはPhil Spector。アルバム上の著作権表記はバンド4人名義として流通しており、完成された“曲”というよりセッションのスナップショットとして位置づけられる。

歌詞のテーマと意味

歌詞はジョン・レノンの即興的なコール&レスポンスを中心に構成され、スラングの“dig”が持つ「気に入る」「理解する」といったニュアンスを反復。メディア、著名人、社会的組織など当時の固有名を矢継ぎ早に挿入し、情報過多の時代感やポップ・カルチャーの奔流をコラージュ的に描く。固定的な物語や明確なメッセージよりも、セッションの勢いとスタジオの空気感をそのまま閉じ込めた“瞬間の記録”が主眼で、歌詞の断片性自体が作品の意味となっている。

歴史的背景

本作は“Get Back/Let It Be”セッションの最中に生まれた。リハーサルから本番までをカメラが追い、オーバーダブを最小限に“原点回帰”を目指した企画の中で、メンバーは多数の即興ジャムを展開。Dig Itも複数テイクにわたる長い演奏の一部で、Spectorがアルバム向けに大幅に短縮・編集した。バンド内の緊張が語られる一方、プレストンの参加が生むグルーヴや、瞬発力ある化学反応も刻印されている。

有名な演奏・映画での使用

ライヴでの定番曲ではなく、主な露出は映像作品内に限られる。1970年の映画『Let It Be』にはアルバム収録より長い断片が登場し、2021年のドキュメンタリー『The Beatles: Get Back』でもセッションの文脈の中で観察できる。外部作品での顕著な使用や、広く知られたカバーについては情報不明。スタジオ内の即興をそのまま見せる性質上、記録映像との親和性が高い楽曲といえる。

現代における評価と影響

完成度の高い“楽曲”というよりセッション記録に近いため、アルバムの流れを彩る小品と捉える向きもあれば、創作現場の生々しさを伝える重要な断片として評価する声も強い。2003年の『Let It Be… Naked』では未収録となり、作品の再編集方針を象徴する判断として議論を呼んだ。のちの資料公開やドキュメンタリーで制作過程が可視化されるにつれ、ビートルズの即興性と集団性を測る指標として再評価が進んでいる。

まとめ

Dig Itは、ビートルズ後期の創作現場を切り取ったドキュメンタリー的トラックであり、即興と編集が生んだ“音のスナップショット”。短い尺ながら、時代の雑踏、バンドの呼吸、ゲストの推進力が凝縮されている。名曲群の陰で見落とされがちだが、『Let It Be』の文脈と映像資料を合わせて聴くことで、作品世界の輪郭とプロジェクトの実像がより立体的に立ち上がる。