One After 909
- 作曲: LENNON JOHN WINSTON, MCCARTNEY PAUL JAMES

One After 909 - 楽譜サンプル
One After 909|歌詞の意味と歴史
基本情報
「One After 909」はLENNON JOHN WINSTONとMCCARTNEY PAUL JAMESの共作で、ビートルズが1970年のアルバム『Let It Be』で発表したロック曲。バンド初期に書かれ、のちに“Get Back”期の方針に沿って再演・収録。アルバム版はフィル・スペクターのプロデュース。簡潔でエネルギッシュな演奏と、初期ロックンロールへの愛着を感じさせる作風が特徴で、アルバムの中でもライブ感が際立つトラックとして知られる。
歌詞のテーマと意味
タイトルにある“909の次の列車”という言い回しどおり、鉄道をモチーフにした軽妙な失恋ソング。列車番号や乗り間違いといった日常のズレをユーモラスに膨らませ、疾走するロックンロールのビートに乗せて関係のすれ違いを描く。言葉遊びと掛け合いボーカルが魅力で、深刻さよりも勢いと楽しさを前面に出した物語運びが聴きどころ。具体的な地名や固有の背景に依存せず、普遍的な“間の悪さ”を描く点が親しみやすさにつながっている。
歴史的背景
本作はジョン・レノンが10代の頃に書いた最古級のレパートリーの一つとして知られ、1963年にEMIスタジオで試録音されるも未発表に終わった。1969年1月の“Get Back/Let It Be”セッションで再浮上し、原点回帰ロック路線の象徴曲として復活。1970年『Let It Be』に収録され公式化された。初期の作曲センスと、後年の演奏技量・バンドの結束感が交差することで、キャリア全体をつなぐハブのような位置づけを獲得している。
有名な演奏・映画での使用
1969年1月30日、ロンドンのアップル本社屋上でのルーフトップ・コンサートで披露され、その演奏が広く知られる。1970年の映画『Let It Be』に収録。1995年『Anthology 1』に1963年テイク、2003年『Let It Be… Naked』に別編集版、2021年『The Beatles: Get Back』にも登場。スタジオ作品でありながら、実演の熱量が作品認知の核になっている稀有な例といえる。
現代における評価と影響
後期ビートルズの中で、本作はルーツ志向の勢いとライヴ感を示す重要作として評価される。シンプルな進行とリフ、ツイン・ボーカルはガレージ/パブ・ロック的美学の原型として参照され、初期衝動と円熟が同居する稀有な例と見なされている。重層的なスタジオ技法よりも、バンドの呼吸をそのまま刻んだ魅力が前面に出ており、“Get Back”プロジェクトの理念を体現する曲として位置付けられることが多い。
まとめ
初期に生まれ、終盤で結実した「One After 909」は、ビートルズの軌跡を一本で語ることができる曲だ。軽快な物語性と痛快な演奏が、時代を越えて新鮮さを保ち、今なおライブ・バンドとしての彼らの真価を伝えている。アルバム『Let It Be』や各種映像と併せて触れることで、作品の本質がいっそう鮮明になるだろう。