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Old Brown Shoe
- 作曲: HARRISON GEORGE

Old Brown Shoe - 楽譜サンプル
Old Brown Shoe|歌詞の意味と歴史
基本情報
Old Brown Shoeは、ジョージ・ハリスン作によるビートルズのシングルB面曲(1969年)で、A面The Ballad of John and Yokoと同時に発表。公式アルバム未収録だが、コンピレーションPast Mastersや1967–1970(通称ブルー・アルバム)に収められ、現在は主要配信でも聴取可能。作詞・作曲はGeorge Harrison、ジャンルはロック。スタジオ録音で、軽快なピアノと歯切れのよいリフ、推進力のあるベースが特徴の、短尺ながら密度の高い一曲。
歌詞のテーマと意味
歌詞は、上下・左右、善悪といった「対概念」の連打で世界の二面性を軽やかに描くのが要点。語感の反復や反対語の並置がユーモラスなリズムを生み、地に足のついた「古い茶色の靴」という比喩が、語り手の等身大の視点と現実感を象徴する。恋愛の確かさを求めつつも矛盾に折り合いをつける姿勢がにじみ、ハリスン特有の内省とウィットが共存。明確な物語展開より、言葉の手触りと価値の揺らぎを味わうタイプのテキストだ。
歴史的背景
制作は1969年、アビイ・ロード・スタジオ期の創作ラッシュの中で進行。バンド最終盤に向けハリスンの作家性が開花し、SomethingやHere Comes the Sunと並ぶ年のアウトプットとして位置づけられる。アルバム未収ながらシングルB面に抜擢されたことで、当時の評価と期待の高さを示した。スタジオ・デモから本テイクへと洗練され、バンドのタイトなアンサンブルが骨格を形作っている。
有名な演奏・映画での使用
ビートルズ期に公式なライブ演奏はなく、映画やテレビでの象徴的な使用も情報不明。音源面では、シングル・バージョンに加え、デモ音源が後年の編集盤Anthology 3に収録され、作曲段階のニュアンスが確認できる。演奏者の細部クレジットには資料差があるものの、ピアノのブギー感とベースの推進力、切れ味のあるギターが核である点は各盤で一貫している。
現代における評価と影響
今日では「隠れた名曲」としてしばしば言及され、ハリスン流のポップ・クラフトと語法の独自性が再評価されている。2009年以降のリマスターで音像の抜けが改善し、ストリーミングでもアクセスが容易になったことで若い聴衆にも浸透。ベースとピアノの絡みは演奏家からも支持が厚く、カバーやセッションのレパートリーとして取り上げられる機会がある一方、決定的な映像使用やヒット・カバーの例は情報不明。
まとめ
二項対立を遊ぶ言葉と、ブギー由来の躍動感をコンパクトに凝縮したOld Brown Shoeは、ビートルズ末期の多彩さを示す一篇。A面曲の陰に隠れつつも、ハリスンの作曲術とバンドのアンサンブル力を映す鏡として価値が高い。作品背景と歌詞の要点を押さえて聴けば、短い曲中に仕込まれた機知と推進力が一層鮮明に立ち上がるだろう。