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There Will Be Peace in the Valley for Me

  • 作曲: DORSEY THOMAS A
#洋楽ポップス
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There Will Be Peace in the Valley for Me - 楽譜サンプル

There Will Be Peace in the Valley for Me|歌詞の意味と歴史

基本情報

『There Will Be Peace in the Valley for Me』(別題: There'll Be Peace in the Valley)は、ゴスペルの開拓者トーマス・A・ドーシーによる楽曲。祈りと慰めを主題とする歌詞を持つ歌唱曲で、教会合唱からポピュラー界まで幅広く歌われてきた。作曲年は情報不明。シンプルなメロディと応答しやすいフレーズ設計により、ソロ、コーラス、会衆賛美のいずれにも適応しやすい点が強みである。

歌詞のテーマと意味

歌詞は、困難や嘆きのただ中にあっても、やがて“谷”に訪れる静穏と救いを求める信仰の告白を描く。旧約的イメージに基づく動物たちの調和、涙の終息、安息の約束など、終末的平和のビジョンが連なる。世俗的なラブソングではなく、個の祈りが共同体の希望へと広がる構造が特徴で、葬儀や追悼の場でもしばしば歌われる。反復される祈願が聴き手の感情に寄り添い、苦難の現実と救済の希望を橋渡しする。

歴史的背景

作者のドーシーは“ゴスペルの父”と称され、ブルースと賛美の語法を結びつけてモダン・ゴスペルを確立した中心人物。本曲もその文脈にあり、教会で歌われるだけでなく、大衆音楽の流通網を通じて広く知られるようになった。特に1950年代以降、宗教曲がカントリーやポップの市場に越境する動きの象徴的レパートリーとなり、黒人教会の霊歌がアメリカ音楽全体へ浸透していく過程を示す重要曲として位置づけられている。

有名な演奏・映画での使用

代表的な録音には、カントリー歌手レッド・フォーリーによる1951年のヒット盤、エルヴィス・プレスリーが1957年に発表したEPおよびテレビ番組での歌唱、ゴスペルの至宝マヘリア・ジャクソン、サム・クック在籍期のソウル・スターラーズらがある。これらの名演は、教会発の賛歌がカントリー/ロックンロールを含む大衆シーンへ受容される契機となり、後続のクロスオーバーに道を開いた。映画での使用については情報不明。

現代における評価と影響

今日も教会の讃美歌集やゴスペル合唱の定番として受け継がれ、世代やジャンルを越えてカバーが続く。痛みを抱える人々に寄り添う内容ゆえ、社会的不安や災害の時期に再評価されることも多い。学術的には、ドーシーの作法が示すブルース的語りと賛美の融合例として扱われ、実演現場ではシンプルな和声の上でリードとコーラスの応答を活かすアレンジが標準化している。

まとめ

平易な言葉で深い救済のビジョンを提示し、宗教曲でありながらポピュラー音楽史にも刻まれた一曲。トーマス・A・ドーシーの作家性と、アメリカ音楽の越境性を体現するスタンダードとして、今後も礼拝とコンサート双方で歌い継がれていくだろう。