If He Walked Into My Life
Mame
- 作曲: HERMAN JERRY

If He Walked Into My Life - 楽譜サンプル
If He Walked Into My Life|歌詞の意味と歴史
基本情報
「If He Walked Into My Life」は、1966年初演のブロードウェイ・ミュージカル『Mame』に収められた抒情的バラード。作曲・作詞はジェリー・ハーマン。劇中では主人公メイムが甥パトリックとの歳月を回想し、母性的な自省を独白する重要曲で、オリジナル・キャストのアンジェラ・ランズベリーが歌唱した。舞台の大きな流れを静かに止め、人物の内面を照射する“止め歌”として位置づけられる代表的ナンバーである。
歌詞のテーマと意味
歌詞は恋愛ではなく「子を思う大人」の視点が中心。幼少から育てた彼が成長し、もし今ここに現れたなら自分は正しく導けたか――という後悔と慈愛が交錯する。問いかけ形のリフレインが感情の波をつくり、自己反省が肯定へ向かう過程を描く。言葉は平易ながら、フレーズの反復と高まる旋律で感情の層を積み重ねるのが特徴。具体的な歌詞全文はここでは割愛。
歴史的背景
『Mame』は『Hello, Dolly!』に続くハーマンの代表作の一つ。活気あるショーナンバーの対極として、この曲は第二幕の感情的支点を担い、1960年代ブロードウェイに典型的な“大バラード”の系譜を示す。メロディは広い音域と長いブレスを要し、主役の演技力と歌唱力を際立たせる設計だ。管弦のサポートは和声進行を明快に示し、言葉の抑揚を丁寧に受け止めるオーケストレーションが採用されることが多い。
有名な演奏・映画での使用
舞台ではランズベリーのほか、多くの再演キャストがレパートリー化。ポピュラー界ではイーディ・ゴーメの録音が知られ、その表現力で楽曲の浸透に寄与した。コンサート用アレンジやキー変更も一般的で、歌手の年齢や声質に応じた解釈が広がっている。1974年の映画版『Mame』でも用いられ、主演ルシル・ボールが歌唱。チャート成績や受賞歴の詳細は情報不明。
現代における評価と影響
今日ではカバレー、リサイタル、ミュージカルのオーディションで定番の選曲。成熟した女性役の心理を示す教材として重宝され、演出家は場面の呼吸を整える“ストップ・ザ・ショー”の瞬間として配置する。録音や出版、教育現場での継続的な引用が、その普遍性を支えている。ジャンル横断のカバーも多く、編曲によりジャズ寄りからクラシカルな伴奏まで幅広く適応する柔軟性を示す。
まとめ
母性的なまなざしで自己と向き合うこの曲は、華やかな『Mame』の中で静かな核心を担う。明快な旋律と言葉運び、舞台文脈との結びつきが長寿の理由であり、単独で歌われても物語性が損なわれない完成度を持つ。作品の背景を踏まえて聴くことで、問いかけの一言一句がより深く響き、ブロードウェイ・バラードの魅力が鮮明になる。