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This Nearly Was Mine(South Pacific)

  • 作曲: RODGERS RICHARD
#スイング#洋楽ポップス#スタンダードジャズ#映画音楽
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This Nearly Was Mine(South Pacific) - 楽譜サンプル

This Nearly Was Mine(South Pacific)|楽曲の特徴と歴史

基本情報

This Nearly Was Mine は、リチャード・ロジャース作曲、オスカー・ハマースタイン2世作詞によるミュージカル『南太平洋』(1949年初演)の抒情的バラード。劇中ではフランス人実業家エミール・ド・ベックが、手にしかけた愛を失いかけた痛切な思いを吐露する重要曲として位置づけられる。のちに多くの歌手・演奏家に取り上げられ、舞台の枠を越えてスタンダード・ナンバーとして親しまれている。

音楽的特徴と演奏スタイル

旋律は広い音域を用いながら自然な語り口で上昇し、クライマックスへ向けて長いフレーズで感情を高めるのが特徴。ロジャースらしい流麗な和声運びと転調感が、諦念と高揚を交錯させる。テンポはバラードが基本で、歌唱では言葉のニュアンスを生かしたルバートやダイナミクスの対比が肝要。ジャズの現場ではピアノ・トリオやギターを基調に、落ち着いたテンポでハーモニーをリハーモナイズしつつ、メロディの長い息づかいを尊重する演奏が好まれる。キーは歌い手の声域に合わせて移調されることが多く、エンディングは余韻を残すフェルマータやサブトニック系の柔らかな終止が選ばれる傾向にある。

歴史的背景

『南太平洋』は第二次世界大戦下の南太平洋を舞台に、偏見や人種差別の問題を織り込みながら恋愛を描いたロジャース&ハマースタインの代表作。1949年のブロードウェイ初演は高い評価を得て、多数の賞を受賞した。本曲は第2幕に配され、主人公エミールの内面を深く掘り下げる役割を担う。作品全体の主題――偏見を超える愛の可能性――と響き合いながら、個の喪失感を普遍的な情感へと昇華している点が、ミュージカル曲としての完成度を支えている。

有名な演奏・録音

ブロードウェイ初演では、エミール役のエジオ・ピンザが堂々たる低音で印象的な解釈を示した。1958年の映画版『南太平洋』では、俳優ロッサノ・ブラッツィの歌唱をジョルジオ・トッツィが吹替え、劇的な存在感で楽曲の魅力を広く知らしめた。以後、クラシック声楽家によるリサイタルや、ジャズ・ヴォーカル/器楽陣による録音が数多く残され、コンサートやクラブでの定番レパートリーとして継続的に取り上げられている。

現代における評価と影響

本曲はショー・チューンの枠を超え、ジャズ・バラードの重要曲としても評価される。長く伸びる旋律線と語りの密度は、歌手の解釈力やブレス、フレージングを試す教材としても重宝され、音大や舞台オーディションのレパートリーにもしばしば選ばれる。舞台再演や映画・映像作品での引用も続き、20世紀アメリカ音楽の叙情を体現する楽曲として今日なお強い存在感を放つ。

まとめ

This Nearly Was Mine は、『南太平洋』のドラマを支える核心的バラードであり、独立したスタンダードとしても息長く演奏されてきた名曲。豊かな旋律と和声、言葉の抒情が融合し、失われかけた愛の普遍性を描き出す。舞台・録音の双方で多彩な解釈が可能な、時代を超えるレパートリーである。