Till We Meet Again
- 作曲: WHITING RICHARD A

Till We Meet Again - 楽譜サンプル
Till We Meet Again |歌詞の意味と歴史
基本情報
「Till We Meet Again」は、リチャード・A・ホワイティング(作曲)とレイモンド・B・イーガン(作詞)による1918年発表のポピュラー・ソング。3拍子のワルツで、当時のティン・パン・アレー流儀のヴァース+コーラス構成を備える。流麗な旋律線と分かりやすい和声進行が特徴で、家庭のピアノでも歌いやすく、ダンスホールのピアノ伴奏にも適した書法が採られている。楽譜出版を前提とした設計ゆえ、旋律は口ずさみやすく、コーラス部分に明快な高揚点が置かれているのも魅力である。
歌詞のテーマと意味
歌詞は離別と再会の約束を軸に、別れの瞬間に相手を勇気づける姿勢を描く。悲嘆に沈むのではなく、笑顔と希望で別れを受け止める情緒が核心で、前向きな語り口が多くの人々の共感を呼んだ。戦時や長期の旅立ちなど避け難い別れを抱える状況で、心の支えとなるメッセージ性をもつ。過剰な叙情に流れず、家庭的で親しみやすい語彙で書かれているのも特長で、世代を超えて歌い継がれる要因となった。コーラスのフックが強く、集団で歌うと一体感が生まれる点も長寿の理由と言える。
歴史的背景
制作は第一次世界大戦末期。出征や復員が社会の現実だった時代に、別れと再会をうたう本作は時代の空気と強く共振した。発売後、楽譜が大きなヒットとなり、1919年の米国楽譜市場を席巻したことが広く記録されている。家庭の客間にピアノがあることが珍しくなかった時代背景も追い風となり、家庭音楽・サロン・学校の集いなど多様な場で歌われ、ダンス・ワルツとしても愛用された。ティン・パン・アレーの職業作曲家として活躍したホワイティングにとっても、初期を代表する成功作に位置づけられる。
有名な演奏・映画での使用
本曲はアコースティック録音期から多数のシンガーやダンス・バンドに取り上げられ、テノール歌手ヘンリー・バー(Henry Burr)らによる初期のヒット録音が知られる。以後も戦間期から戦後にかけ、合唱編曲やサロン向けのピアノ伴奏譜が普及し、地域の合唱団やアマチュアの集いでも定番曲となった。特定の映画での顕著な使用例については情報不明だが、タイトル自体は別作品名としてもしばしば用いられている。録音や初演者の詳細な系譜には諸説があるため、研究資料の参照が望ましい。
現代における評価と影響
現在、本作はアメリカン・ポピュラーの古典として位置づけられ、懐かしのスタンダード・ワルツとしてコンサートやコミュニティ合唱のレパートリーに残る。別れの場面や送別会での合唱、シニア世代の音楽療法的プログラム、バーバーショップや室内アンサンブルの小編成アレンジなど、実演の場は広い。録音史・大衆音楽史を学ぶ上でも、楽譜産業がヒットを牽引した時代を示す格好のケーススタディとして参照され、ティン・パン・アレーのソングクラフトの豊かさを現代に伝える存在であり続けている。
まとめ
ワルツの親しみやすさと、再会を信じる温かなメッセージが結びついた「Till We Meet Again」は、時代を越えて歌い継がれてきた。ティン・パン・アレーの職人技が生んだ普遍的なメロディは、現代でも別れの歌の定番として穏やかな慰めを与え続けている。歴史的背景と音楽的魅力の両面から価値を持つ名曲として、今後も多様な場で演奏されるだろう。