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Two Sleepy People
- 作曲: CARMICHAEL HOAGY

Two Sleepy People - 楽譜サンプル
Two Sleepy People|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Two Sleepy Peopleは、作曲家ホーギー・カーマイケルと作詞家フランク・レッサーによる1938年の楽曲。初出は映画『Thanks for the Memory』(1938年)で、ボブ・ホープとシャーリー・ロスがデュエットで披露した。恋に落ちた二人が眠気に負けつつも別れを惜しむ、親密でユーモラスな情景を歌い上げる名曲で、以後ジャズ/ポピュラー両領域で広く演奏されるスタンダードとして定着した。バラードからミディアム・テンポまで可変性が高く、歌手の個性やアレンジ次第で様々な表情を見せることが特徴である。
音楽的特徴と演奏スタイル
滑らかな旋律線と、会話劇のように進むフレーズ構成が魅力。デュエットでの掛け合い、独唱での語り口のどちらも映え、イントロをルバートで導きサビでスイングに乗せる構成が好まれる。和声進行はスウィング期の標準的語法に基づき、転調やツー・ファイヴ進行を活かした余韻のある終止で、ボーカルの細やかなニュアンスを引き立てる。伴奏編成はピアノ・トリオ、小編成コンボ、ストリングス入りのオーケストラなど幅広く、夜更けのムードを醸すミュート・トランペットやサックスのオブリガートが効果的に用いられることが多い。
歴史的背景
1930年代後半のハリウッドとティン・パン・アレーの協業の中で生まれた本曲は、映画音楽とポピュラーソングのヒットが相互に波及する当時の産業構造を示す好例である。『Thanks for the Memory』でのロマンティックな場面設定と、耳に残るメロディが相まって楽曲は広く浸透。カーマイケルの洗練された作曲技法と、レッサーの日常会話をすくい取る巧みな歌詞作法が、親密でユーモラスな世界観を形作った。初出後まもなく多くの歌手・楽団が競って録音し、放送やレコード市場で存在感を高めた。
有名な演奏・録音
映画でのボブ・ホープ&シャーリー・ロスのデュエットは初期の決定版として知られる。ピアニスト/エンターテイナーのファッツ・ウォーラーによる1938年の録音はスウィングの語法で楽曲の魅力を際立たせ、広い支持を得た。また、作曲者ホーギー・カーマイケル自身がエラ・ローガンと録音したヴァージョンもよく知られ、作曲者の意図を反映した解釈として参照される。以降も多数の歌手やジャズ奏者が取り上げ、時代ごとの音色やテンポ感で更新され続けている。
現代における評価と影響
Two Sleepy Peopleは、夜更けの親密な情景を描くレパートリーとして、ジャズ・クラブやコンサートで定番の一曲となっている。デュエットの名手が取り上げるほか、シンガーが語り口や間の取り方を磨く教材としても有用で、アレンジャーにとっては和声の置き換えやテンポ設計の工夫が試される素材だ。映画発のポピュラー曲がジャズ標準曲へ転化するプロセスを示す歴史的ケースでもあり、現在も録音・配信・映像作品で継続的に採用される。
まとめ
1938年の誕生以来、Two Sleepy Peopleはロマンティックで親しみやすいメロディと会話劇的な表現で愛されてきた。映画から生まれ、数多のカバーを通じてジャズ・スタンダードとしての地位を確立。編成やテンポを問わず演奏可能な柔軟性は、今日まで本曲を現役のレパートリーであり続けさせている。