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Wedding March

  • 作曲: MENDELSSOHN BARTHOLDY FELIX J L
#トラディショナル#クラシック
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Wedding March - 楽譜サンプル

Wedding March|作品の特徴と歴史

基本情報

《Wedding March(結婚行進曲)》は、フェリックス・メンデルスゾーンがシェイクスピアの戯曲『夏の夜の夢』のために書いた付随音楽(作品61)の一曲で、1842年に作曲された。調性は晴朗なハ長調、原曲はフルオーケストラ編成で、演奏時間はおよそ4〜5分。西洋式の挙式で新郎新婦の退場曲として広く親しまれ、日本でも式場やオルガン編曲で頻繁に用いられる。原典は舞台音楽の一部分だが、単独曲としての独立性が高く、管弦楽、オルガン、ブラス・アンサンブル、ピアノ二重奏など多様な編成で演奏されている。

音楽的特徴と表現

冒頭からトランペットやトロンボーンのファンファーレ風の和声進行が鳴り響き、荘厳かつ祝祭的な雰囲気を形成する。明確な拍感と行進曲のリズムが終始貫かれ、聴き手に高揚感と安定感を同時にもたらす。一方で中間部には木管や弦による柔らかい旋律が置かれ、華やかな外面の中に温かい抒情が差し込まれる構成が魅力だ。形式的には行進曲風のA—中間—Aの対比と、堂々たるコーダで締めくくられ、儀礼の場にふさわしい格調を支える。編曲版では、低音の刻みやファンファーレの処理を工夫することで、少人数でも原曲の壮麗さを再現できる点が実用上重宝されている。

歴史的背景

メンデルスゾーンは17歳で序曲(作品21)を先行して作曲し、その後1842年、プロイセン王の要請による『夏の夜の夢』舞台上演のために付随音楽全曲を完成させた。《結婚行進曲》はこの付随音楽の中核的ナンバーで、劇中の婚礼を祝う音楽として構想されている。楽曲が一般社会に爆発的に浸透した契機として、1858年に英国ヴィクトリア女王の長女ヴィクトリア(プリンセス・ロイヤル)の結婚式で演奏された事実が広く知られ、以後、欧米の挙式で定番化した。19世紀末から20世紀にかけて数多くの編曲が出版され、家庭用オルガンやピアノでも演奏されるレパートリーへと拡大した。

使用された映画・舞台(該当時)

本来は『夏の夜の夢』の舞台上演における婚礼場面を彩る音楽として位置づけられ、劇のクライマックスを明るく締めくくる役割を担う。20世紀以降は、舞台だけでなく映像作品でも“結婚”を象徴するサウンドアイコンとして汎用され、儀式の開始・終了やコミカルな演出の合図として引用されることが多い。具体的な個別作品の網羅は情報不明だが、映画やテレビ、アニメーションなど幅広い媒体で反復的に用いられ、聴衆の共通認識を形成するに至った。

現代における評価と影響

今日、《結婚行進曲》はワーグナー《婚礼の合唱》と並ぶ“ウェディング定番”として確固たる地位を持つ。一方で、宗派や地域、教会の方針により礼拝での使用可否が異なる場合もあり、式場ではオルガン版や弦楽版など状況に応じた選択が行われている。作品自体は作曲者没後70年以上を経て公有(パブリックドメイン)だが、近年の編曲や録音には個別の権利が及ぶ点には留意が必要だ。教育現場では和声・管弦楽法の好例として参照され、作曲技法と機能的な“式典音楽”のモデルを同時に示す作品として評価され続けている。

まとめ

《結婚行進曲》は、舞台音楽に端を発しながら、式典の象徴音楽として普遍的地位を得た稀有な作品である。輝かしいファンファーレと穏やかな中間部の対比、明快な行進リズムという設計が、祝祭の感情を端的に表現する。原典のオーケストラ版に触れることで、耳慣れた旋律に潜む精緻な書法と彩りを再発見できるだろう。