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Darn That Dream
- 作曲: VAN HEUSEN JIMMY

Darn That Dream - 楽譜サンプル
Darn That Dream|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Darn That Dream」はJimmy Van Heusen作曲、Eddie DeLange作詞による1939年のジャズ・バラード。ブロードウェイ・ミュージカル「Swingin' the Dream」で初演され、その後スタンダード化した。構成は32小節のAABA形式で、歌ものとしても器楽曲としても親しまれる。テンポ設定は演者により幅があり、しっとりしたバラードから穏やかなミディアムまで柔軟に解釈される。歌詞の主題は、夢と現実の落差に揺れる恋心で、叙情性の高い旋律と相まって余韻深い世界を形づくる。
音楽的特徴と演奏スタイル
旋律は滑らかなレガートを基調に、半音階的な進行や繊細な転調感を織り込み、内声の動きが和声の色彩を豊かにする。和声面ではii–Vの連鎖や副次ドミナントが多用され、リハーモナイズではトライトーン・サブやディミニッシュの挿入が効果的。ボーカルは息のコントロールとフレーズ末の減衰処理が肝要で、器楽では9th、11th、13thなどのテンションで陰影を強める。ルバートの序奏やブレイクを活用すると、歌詞の内省的なムードがより際立つ。
歴史的背景
本曲は、シェイクスピア作品をスウィング化した舞台「Swingin' the Dream」のために書かれたが、舞台自体は短命だった。それにもかかわらず楽曲は独立して人気を得て、1940年代のスウィング~バップ期を通じて演奏頻度を高めた。1949–50年にはマイルス・デイヴィス・ノネットが取り上げ、クール・ジャズ的な解釈を提示。これにより、繊細な音量設計とハーモニー感を重視するアプローチが広く知られるようになった。
有名な演奏・録音
商業的成功の端緒としてしばしば言及されるのが、ベニー・グッドマン・セクステットによる録音(ボーカル:マイルドレッド・ベイリー)で、チャート・ヒットとなった記録が残る。さらに、マイルス・デイヴィス「Birth of the Cool」期の録音ではケニー・ヘイグッドの歌唱が印象的に配置された。以後、数多くの歌手・器楽奏者がスタジオ/ライヴで取り上げ、解釈の幅を広げている。
現代における評価と影響
今日では、ジャズ・クラブのバラード・セットや教育現場のレパートリーとして定着し、歌とアドリブ双方の表現力を測る“基準曲”の一つと見なされることが多い。スタンダード集への収録やセッションでの常用により、メロディを尊重する解釈から大胆な再和声まで、多彩なアプローチが共存。録音テクニックの進化に伴い、静謐なダイナミクス設計や空間系エフェクトを活かした現代的なサウンドデザインでも再評価が進む。
まとめ
舞台発の一曲ながら、詩情豊かな旋律と洗練された和声によって長く愛されてきた「Darn That Dream」。歌でも器楽でも映える普遍性をもち、時代ごとの解釈を受け止める懐の深さが魅力である。入門者のスタンダード研究にも、表現を磨きたい上級者にも有用な一曲と言える。