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Are You In The Mood
- 作曲: REINHARDT DJANGO,GRAPPELLI STEPHANE

Are You In The Mood - 楽譜サンプル
Are You In The Mood|楽曲の特徴と歴史
基本情報
『Are You In The Mood』は、ギタリストのジャンゴ・ラインハルトとヴァイオリニストのステファン・グラッペリが共作したインストゥルメンタル曲。ホット・クラブ・ド・フランス五重奏団のレパートリーとして知られ、ジプシー・ジャズの定番として親しまれている。初演・初録音の正確な時期は情報不明だが、1930年代のパリで広まったことは確かだ。コンボ編成での演奏に適し、セッションでも頻出するスタンダードである。
音楽的特徴と演奏スタイル
アコースティック・ギターの“ラ・ポンプ”が刻む跳ねるスウィング感、ヴァイオリンとソロ・ギターの躍動的なコール&レスポンスが核。短い主題から即興へ滑らかに展開し、休符とシンコペーションを活かしたフレージングが映える。右手のレストストロークやクロマチック装飾、ターンアラウンドでの推進力など、マヌーシュ奏法の教則的要素を多く含み、テンポは中速〜速めが標準的だ。
歴史的背景
アメリカ発のスウィングを大陸ヨーロッパの弦楽アンサンブルに移植したホット・クラブ・スタイルの隆盛期に生まれた一曲。ベースと二本のリズムギターが土台を作り、ギターとヴァイオリンが歌う構図は、電気増幅以前のジャズ表現の可能性を鮮やかに示した。放送やダンスホールの人気を背景に、同時代の聴衆に受け入れられ、後続世代の弦楽ジャズに強い影響を与え続けている。
有名な演奏・録音
代表例として、ジャンゴとグラッペリ率いるホット・クラブ・ド・フランスの1930年代録音が挙げられる。その後もビレリ・ラグレーン、ザ・ローゼンバーグ・トリオ、アンジェロ・ドゥバール、ホット・クラブ・オブ・サンフランシスコなどが取り上げ、ライブとスタジオの双方で数多く記録が残る。いずれも主題の簡潔さと即興の妙味を前面に押し出し、編成ごとの色彩感の違いを楽しめる。
現代における評価と影響
今日では世界各地のマヌーシュ・ジャズ・フェスやジャム・セッションの定番曲。中速から速めのテンポでの合奏訓練に適し、ソロの語彙拡張やコンピングのダイナミクス練習にも用いられる。教育現場やオンライン教材でも頻繁に扱われ、入門者がフォームを学ぶ入口として、上級者が表現の幅を競う舞台として、幅広いレベルで共有されるレパートリーとなっている。
まとめ
シンプルな主題と明快なスウィング感が、奏者の個性を引き出す器となる『Are You In The Mood』。ジプシー・ジャズの美学—アコースティックな躍動、緊密なアンサンブル、華やかな即興—を凝縮したこの曲は、過去の名演に学びつつ、今もステージとセッションで生き続ける不動のスタンダードである。