アーティスト情報なし
Both Sides Now
- 作曲: MITCHELL JONI

Both Sides Now - 楽譜サンプル
Both Sides Now|歌詞の意味と歴史
基本情報
作曲・作詞はジョニ・ミッチェル。1967年にジュディ・コリンズが最初に録音し、広く知られるようになった。ミッチェル自身の歌唱は1969年のアルバム『Clouds』に収録。日本では「青春の光と影」としても知られる。フォークを基盤にポップ感覚を備え、シンプルなメロディと印象的な比喩で長く愛されてきた。
歌詞のテーマと意味
本曲は、物事を「両側から」見たときの認識の揺らぎを描く。雲・恋・人生といったモチーフを通じ、若さの理想と経験による省察の差異を静かに見つめる。断定を避け、変化する自分の視点そのものを主題化することで、聴き手各々の人生段階に響く普遍性を獲得している。告白のような語り口と簡潔な比喩が、聴き手の体験と自然に重なり合う。
歴史的背景
1960年代後半、シンガー・ソングライターの台頭とフォーク・リバイバルの流れの中で誕生。ジュディ・コリンズのカバーがヒットし、ミッチェルは作家性の高さで注目を集めた。アコースティック主体の編成は当時の社会的・文化的変化と呼応し、内省的表現の新しい潮流を象徴した。楽曲の普及とともに、女性作家の視点が大衆音楽の中心へと押し上げられていく契機にもなった。
有名な演奏・映画での使用
名演としては、ジュディ・コリンズ版、ミッチェル自身の1969年版に加え、オーケストラ伴奏で再解釈した2000年のセルフ・リメイクが特筆される。映画では『ラブ・アクチュアリー』(2003)で印象的に使用され、さらに『コーダ あいのうた』(2021)では劇中歌として取り上げられ、世代を越えて再評価が進んだ。端正なメロディと普遍的主題が映像文脈にも適合し、重要場面の感情を増幅させる。
現代における評価と影響
今日ではフォーク/ポップを越えたスタンダードとして位置づけられ、多様な歌手が解釈を重ねる。音域や語り口の自由度が高く、ジャズ寄りの編曲や合唱、音楽教育のレパートリーにも定着。各種の名曲リストに度々選出され、時代や世代をまたいで聴かれ続けている。2000年の再録版は成熟した語りと豊かな和声が評価され、原曲の意味を更新した重要なリファレンスとなった。
まとめ
比喩に富む歌詞と端正な旋律が、成長と気づきの物語を静かに紡ぐ。聴く人の経験が更新されるたびに曲の顔も変わる——その可塑性こそが、半世紀を越えて愛される最大の理由と言える。個人的な独白を普遍へと開く稀有なソングライティングの力が、本曲の核である。