The Boy Next Door
- 作曲: BLANE RALPH,MARTIN HUGH

The Boy Next Door - 楽譜サンプル
The Boy Next Door|楽曲の特徴と歴史
基本情報
The Boy Next Doorは、Hugh MartinとRalph Blaneのコンビによる楽曲。1944年公開のMGMミュージカル映画『若草の頃(Meet Me in St. Louis)』で初披露され、劇中ではJudy Garlandが歌い上げました。男性歌手の録音では歌詞内容に合わせて「The Girl Next Door」の題で歌われる例が広く知られています。作曲・作詞はいずれもMartin/Blaneで、同作中の“Have Yourself a Merry Little Christmas”と並び、後年ジャズ/ポピュラーヴォーカルのスタンダードとして定着しました。調性・形式・出版社などの詳細は情報不明。
音楽的特徴と演奏スタイル
柔らかな旋律線とロマンティックな和声が特徴で、物語性の強いバラードとして歌われることが多い楽曲です。ヴォーカルでは語り口を重視したレガート、抑制の効いたダイナミクス、呼吸を活かしたフレージングが要点。テンポはスローからミディアム・バラードが一般的で、ピアノやギター主体の小編成伴奏でも、ストリングスを加えた華やかなアレンジでも映えます。イントロでのルバート処理から主部へ流れ込む構成や、歌詞の情景と心情を丁寧に描く解釈が好まれ、ジャズ・シンガーのレパートリーとしても親和性が高い楽曲です。
歴史的背景
『若草の頃』はセントルイス万国博覧会を控えた時代を舞台に、家族と恋を描いたMGMの名作ミュージカル。The Boy Next Doorは、主人公エスター(Judy Garland)が“隣家の彼”への淡い想いを静かに告白する場面で歌われ、映画の叙情と人物造形を支える重要なナンバーとなりました。MartinとBlaneはブロードウェイ/映画音楽の名匠として知られ、本曲もスクリーンを飛び出してコンサートやレコーディングで愛唱され、アメリカン・ソングブックの一角を占める存在へと成長しました。
有名な演奏・録音
映画版でのJudy Garlandによる歌唱は代表的なリファレンスです。以降、Frank Sinatraが男性視点の「The Girl Next Door」として録音し、広く知られるようになりました。ジャズ・ヴォーカルではStacey Kentがアルバム『The Boy Next Door』(2003)で取り上げ、現代的な語り口で新たな聴衆にも届かせています。このほか多くの歌手・ジャズ・ミュージシャンがレパートリーとして採用し、ピアノ・トリオやギターとのデュオなど編成を問わず演奏される機会が多い作品です。
現代における評価と影響
The Boy Next Doorは、恋のはじまりの繊細な心理を描き出す歌として、スタンダード・レパートリーの中でも物語性の強さで評価されています。映画音楽由来でありながらジャズ文脈での解釈に耐える普遍性を持ち、教育現場やオーディション、クラブ・シーンまで幅広く活用されています。歌詞の物語性が演者の解釈を促すため、キー設定やテンポ、伴奏の質感によって多彩なニュアンスが生まれ、今日も新しい録音やライブで生命力を保ち続けています。
まとめ
Hugh MartinとRalph Blaneが手がけたThe Boy Next Doorは、映画『若草の頃』発の名曲であり、ジャズ/ポップの垣根を越えて歌い継がれるスタンダードです。Judy Garlandの原点的名唱から、性別違いの視点で歌われる「The Girl Next Door」まで、多様な解釈が楽曲の魅力を拡張してきました。抒情的なメロディとロマンティックなハーモニー、語りかける歌詞が織りなす世界は、今なお多くのリスナーと歌い手を惹きつけています。