Cool
- 作曲: BERNSTEIN LEONARD

Cool - 楽譜サンプル
Cool|作品の特徴と歴史
基本情報
「Cool」はレナード・バーンスタイン作曲、スティーブン・ソンドハイム作詞によるミュージカル『ウエスト・サイド物語』(1957年初演)のナンバー。舞台上でジェッツの若者たちに“冷静さを保て”と促す趣旨の曲で、ドラマの緊張感を音楽的に凝縮する役割を担う。ジャズの語法とクラシック的対位法の統合が際立ち、後年の映画版にも重要な場面音楽として受け継がれている。
音楽的特徴と表現
タイトル通り“クール”な冷静さを表す抑制的フレーズと、内面の焦燥を示す鋭いアクセントやシンコペーションが交錯する。ブルーノートを含む旋律、半音階的進行、タイトなリズム・セクション感を思わせる和声運びが組み合わさり、スウィング〜クール・ジャズ的手触りを帯びるのが特徴。ダンス・セクションでは主題を対位法的に処理した「Cool Fugue」と呼ばれる部分が知られ、モチーフの執拗な反復と段階的な盛り上がりが心理的圧力を可視化する。
歴史的背景
『ウエスト・サイド物語』は1957年ブロードウェイ初演。バーンスタインは都市の暴力と若者文化を、クラシックとジャズの融合語法で描写した。ソンドハイムの精緻な英語詞が人物の心理を明確化し、振付のジェローム・ロビンズが音楽と一体化したドラマ展開を実現。「Cool」は抗争直前後の緊迫を象徴する曲として、物語構造の要に位置づけられた。
使用された映画・舞台(該当時)
舞台版では主に抗争前、リフが仲間に沈着冷静さを求める場面で歌われる。一方、1961年映画版では配置が変更され、アイス(Tucker Smith)がリーダーとして仲間を鎮める象徴的シーンとして展開。ガレージの群舞はロビンズ振付の代表例となった。2021年スピルバーグ版ではトニーとリフの対立を先鋭化させるデュエット的場面に改変され、銃の扱いをめぐる緊張を音楽と動きで可視化している。
現代における評価と影響
「Cool」はミュージカル曲でありながら、ジャズ/吹奏楽/オーケストラで広く演奏される。バーンスタイン自身の管弦楽組曲『ウエスト・サイド物語組曲(Symphonic Dances)』に含まれる「Cool Fugue」はコンサートの定番。ビッグバンドやスクールバンドの編曲も多数流通し、精密なリズム運用とアンサンブル訓練曲として重宝される。映画版の象徴的演出とともに、舞台・映像・コンサートを横断する稀有なレパートリーとして評価が定着している。
まとめ
「Cool」は、ジャズ的クールさと劇的対位法を融合し、登場人物の緊張と理性のせめぎ合いを描いた名曲である。舞台・映画・コンサートの各文脈で異なる解釈が生まれ続け、半世紀以上を経てもその鮮烈さは失われない。