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Experiment In Terror
- 作曲: MANCINI HENRY NICOLA

Experiment In Terror - 楽譜サンプル
Experiment In Terror|作品の特徴と歴史
基本情報
「Experiment In Terror」は、作曲家ヘンリー・マンシーニが1962年公開の同名映画のために書いたインストゥルメンタルの主題テーマである。スコア全体の中心となる楽曲で、映画のオリジナル・サウンドトラックに収録。作詞者は存在せず、歌詞もない。マンシーニと監督ブレイク・エドワーズの継続的な協働の一環として位置づけられ、当時のハリウッドにおける洗練されたサスペンス音楽の代表例とされる。
音楽的特徴と表現
低音域の執拗なオスティナートと、半音階的な動きを含む和声が基調となり、緊張と不安を持続させる設計が際立つ。弱音器を用いた金管、ヴィブラフォンやピアノの硬質なアタック、抑制された打楽器のパルスが層をなし、暗がりの都市情景を思わせる音色を形成。旋律は狭い音域でじわりと推移し、静的な間合いと瞬間的な強調を交錯させる。ジャズ語法とオーケストラ書法の折衷はマンシーニらしく、サスペンスの心理を音色とリズムで描写する点に強みがある。
歴史的背景
1950年代末からマンシーニはブレイク・エドワーズ作品で頭角を現し、「ピーター・ガン」や「ティファニーで朝食を」などでジャズとポップを横断する響きを確立した。本作はその連携の延長線上にあり、初期60年代のスリラー映画が求めた都会的で冷ややかな音響を具体化した例といえる。録音やチャート成績の詳細は情報不明だが、映画公開とともに主題が周知され、サウンドトラック作家としてのマンシーニの評価を一段と固めた。
使用された映画・舞台(該当時)
楽曲は映画「Experiment in Terror」(1962年)のオープニングや要所で用いられ、犯人の影や心理的圧力を音楽面から支える役割を担った。主要モチーフは場面に応じて編成やダイナミクスを変えながら回帰し、観客の記憶に残るサスペンスの標識として機能。具体的な使用尺や編集仕様の詳細は情報不明だが、主題としての存在感は作品全体を通じて明確である。
現代における評価と影響
今日ではマンシーニのサスペンス系テーマとしてしばしば参照され、映像音楽の研究や再演プログラムでも取り上げられる機会がある。ジャズ寄りのリズム・セクションとオーケストラを統合する設計、簡潔な動機操作、音色の選択は、後続のスコア作家にとって実用的な手本となった。広告や二次使用に関する網羅的な記録は情報不明だが、冷ややかな質感と鮮明な主題性は現在の映像文脈でも有効に機能しうる。
まとめ
「Experiment In Terror」は、言葉を介さず不安を描くという映画音楽の核心を体現した一曲である。簡潔なモチーフ運用、洗練された編曲、場面への即応性が結びつき、1960年代ハリウッドのサスペンス美学を結晶化させた。マンシーニの広範なレパートリーの中でも、緊張感の表現に特化した代表的作品として位置づけられる。