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Here’s To Life
- 作曲: BUTLER ARTHUR,BUTLER ARTIE,

Here’s To Life - 楽譜サンプル
Here’s To Life|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Here’s To Life」はArtie Butler作曲、Phyllis Molinary作詞のジャズ・バラード。発表は1988年。歌詞は人生の季節や感謝を静かな語り口で綴り、洗練された和声と伸びやかな旋律が特徴。決定的な知名度はShirley Hornの1991年作で高まり、以後はボーカル・レパートリーの定番として親しまれている。
音楽的特徴と演奏スタイル
テンポはスローバラード。広い音域をゆったりと使う旋律線は、語るようなフレージングとルバートを促し、歌い手の解釈力が試される。和声は半音階的な進行や転調を含み、内声が豊かに動く。ピアノ・トリオに弦やホーンを加えたアレンジとも相性が良く、間を生かした伴奏、低音域のピアノやサステインの長いストリングスが歌の余韻を支える。フェルマータやブレスの置き方で感情の輪郭が大きく変わる点も重要。
歴史的背景
1980年代後半、アメリカン・ソングブックの伝統を踏まえた新作が少なくなる中で、本曲は新しい“スタンダード候補”として誕生。作曲家Artie Butlerと作詞家Phyllis Molinaryの協働により、往年のバラードの叙情を現代的なハーモニーで結晶化した。1991年、Johnny Mandelのオーケストレーションを得たShirley Hornの録音が決定打となり、ジャズ界で広く知られるようになった。
有名な演奏・録音
代表例はShirley Hornのアルバム『Here’s to Life』(1991)。静謐なテンポ、深い間合い、Mandelの弦楽が相まって、本曲の解釈の指針となった。ほかにBarbra Streisandがアルバム『Love Is the Answer』(2009)で取り上げ、洗練されたアレンジと共に幅広いリスナーへと浸透。以降、多数のジャズ・ボーカリストがコンサートや録音でレパートリー化し、ライブの終盤を飾る曲として定着している。映画やドラマでの使用は情報不明。
現代における評価と影響
本曲は“成熟した人生賛歌”として受け止められ、クラブからホール公演まで場の規模を問わず選ばれる。音域や表現の自由度が高いため、歌手の個性が際立ち、リハーモナイズやテンポ・ルバートの幅も大きい。結果として、同曲は近現代に生まれた稀有なボーカル・ジャズのスタンダードとして位置づけられている。
まとめ
「Here’s To Life」は、豊かなハーモニーと語り口の美学で聴き手の心に静かに響く現代バラード。決定的録音を起点に、多彩な解釈を許容する“生きた”レパートリーとして今も歌い継がれている。