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High And Dry
- 作曲: GREENWOOD COLIN,GREENWOOD JONATHAN,O BRIEN EDWARD,SELWAY PHILIP,YORKE THOMAS

High And Dry - 楽譜サンプル
High And Dry|歌詞の意味と歴史
基本情報
High And Dryは、イギリスのロック・バンドRadioheadの楽曲で、2ndアルバム『The Bends』(1995年)に収録。作曲者はCOLIN GREENWOOD、JONATHAN GREENWOOD、EDWARD O BRIEN、PHILIP SELWAY、THOMAS YORKEの5名としてクレジットされている。リリース年は1995年。シンプルな編成と耳に残るメロディで、同作の中でも親しみやすい楽曲として広く知られる。シングルとしてのチャート詳細や細部の初出情報は情報不明。
歌詞のテーマと意味
タイトルの“High and dry”は英語で「置き去りにされる」「見捨てられる」を示す慣用表現。歌詞は、関係性の脆さや成功の表層に潜む孤独、期待と不安のせめぎ合いを描く。主人公は他者の視線や名声の重圧にさらされながら、自尊と依存の間で揺れる。直接的な断罪ではなく、冷静な距離感で自己防衛と喪失の感覚を並置する点に特徴がある。派手な言葉よりも余白を活かし、聴き手に解釈の余地を残すため、過剰なドラマ性より静かな痛みが前面化している。
歴史的背景
本曲は「Creep」で注目を浴びた後、バンドが音楽的成熟を示した『The Bends』期に制作された。歪んだギター中心のグランジ潮流から距離を置き、よりメロディとダイナミクス、アンサンブルの呼吸を重視する方向性が確立されつつあった時期である。アルバムはジョン・レッキーのプロデュースで知られ、本曲も同時期の制作体制の中で、抑制と高揚のバランスが緻密に設計されている。結果として、90年代中盤のUKロックの中で、叙情と緊張感を併せ持つ代表的トラックとなった。
有名な演奏・映画での使用
ライブでは中期から現在に至るまで折に触れて演奏され、ファンの支持が厚い。カバーは多数存在し、ジャズ・ポップ領域ではJamie Cullumによる解釈が知られる。映像作品や映画での顕著な使用については情報不明。スタジオ版の端正な佇まいに対し、ライブではテンポやダイナミクスの微細な変化によって、寂寥感と開放感のコントラストがより際立つ点が聴きどころである。
現代における評価と影響
プレイリスト時代でも初期Radioheadを象徴する楽曲として再評価が進み、入門曲として薦められることが多い。シンガー・ソングライターやジャズ系アーティストのレパートリーに取り入れられるなど、ジャンル横断的な影響も継続。ギターのクリーントーンと素朴なコードワーク、繊細なボーカル・コントロールは、学習教材や演奏解説でも取り上げられることがある。派手さに頼らず心情の陰影を描く手つきは、以後のオルタナティブ・ロックにおける一つの美学を示した。
まとめ
High And Dryは、親しみやすい旋律と「置き去り」をめぐる普遍的な感情を結びつけ、Radioheadの表現幅を広げた重要曲である。ミニマルな構成の中に感情の振幅を宿す手法は、時代を超えて機能し続ける。本曲を入口に『The Bends』全体を辿ることで、バンドの転換点と成熟のプロセスがより立体的に見えてくるだろう。