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Isn’t This A Lovely Day (To Be Caught In The Rain?)
- 作曲: BERLIN IRVING

Isn’t This A Lovely Day (To Be Caught In The Rain?) - 楽譜サンプル
Isn’t This A Lovely Day (To Be Caught In The Rain?)|楽曲の特徴と歴史
基本情報
本曲はアーヴィング・バーリンが作詞作曲したスタンダードで、1935年のハリウッド映画『トップ・ハット』で初披露。劇中ではフレッド・アステアが雨宿りの東屋で歌い、ジンジャー・ロジャースとのロマンティックな場面を彩った。原題は“Isn’t This A Lovely Day (To Be Caught In The Rain?)”。出版年は1935年、ジャンルはジャズ/ポピュラーに分類される。
音楽的特徴と演奏スタイル
メロディは覚えやすく、穏やかなスウィング感と会話的なフレージングが魅力。歌詞は“雨に降られたからこそ素敵な時間になった”という逆説的ユーモアで、ウィットに富む。ステージではミディアム・テンポの4ビートや、ギターやピアノを中心にした小編成での柔らかな伴奏が好まれる。ヴォーカルはレガートと間合いを活かし、イントロで自由なルバートを置く解釈も一般的。インスト演奏でもテーマの可憐さを損なわず、軽やかなスイングでアドリブが展開される。
歴史的背景
1930年代のハリウッドは、洗練されたダンスと歌曲で観客を魅了するミュージカル映画が隆盛。本曲はその流れの中で生まれ、アステア=ロジャース作品の象徴的場面に結び付いたことで広く知られるようになった。バーリンは言葉と旋律を一体で書く作家として名高く、本曲でも日常の情景を洒脱な恋の歌へと昇華している。映画公開後、楽譜とレコードを通じてアメリカ各地へ急速に広まった。
有名な演奏・録音
代表的な録音として、映画『トップ・ハット』でのフレッド・アステアの歌唱は外せない。ジャズ・ヴォーカルでは、エラ・フィッツジェラルドが『Ella Fitzgerald Sings the Irving Berlin Song Book』(1958, Verve)で端正かつ温かな解釈を残している。以後も多くの歌手・器楽奏者がレパートリーに加え、コンサートやクラブで親しまれてきた。
現代における評価と影響
今日ではグレイト・アメリカン・ソングブックの一曲として定着し、スタンダード教育やセッションでも取り上げられる機会が多い。雨というネガティブな出来事をポジティブに反転させるメッセージは時代を超えて共感を呼び、映画音楽とジャズを橋渡しするレパートリーとして価値を保ち続ける。編成やテンポの自由度が高く、初学者から熟練プレイヤーまで表現の幅を試せる点も支持の理由だ。
まとめ
『Isn’t This A Lovely Day』は、映画発の名曲がジャズの現場で磨かれた好例である。気品ある旋律とウィットに富む視点が、日常の雨を恋のきっかけへと変える。初演の文脈と多様な演奏解釈を踏まえ、今後も長く歌い継がれるだろう。