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It Happened In Monterey

  • 作曲: ROSE WILLIAM,WAYNE MABEL
#スタンダードジャズ
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It Happened In Monterey - 楽譜サンプル

It Happened In Monterey|楽曲の特徴と歴史

基本情報

It Happened In Monterey は、作曲Mabel Wayne、作詞Billy Roseによる1930年発表のポピュラー・ソングで、現在はジャズ・スタンダードとして親しまれている。初出は映画『キング・オブ・ジャズ』で、ポール・ホワイトマン楽団とザ・リズム・ボーイズ(若き日のビング・クロスビーを含む)が紹介した。歌詞は“昔メキシコのモンテレイで起きた短い恋の記憶”を回想する内容で、郷愁とほろ苦さが同居する情感が核となっている。タイトルは“Monterey”表記だが、歌詞が指す地はメキシコのモンテレイである点が特筆される。

音楽的特徴と演奏スタイル

本曲は、スタンダード曲で一般的な32小節系(AABA型)で演奏されることが多く、滑らかな旋律線とわずかな跳躍を織り交ぜた歌いやすいメロディが特長。バラードからミディアム・スウィングまでテンポ可変で、演者の表現幅が広い。ボーカルでは語り口の間合いとレガートのコントロールが要となり、フレーズ末尾の余韻やブレスの置き方で情景描写が変化する。スウィング・アレンジでは2ビートから4ビートへの推進感を活かし、対旋律やサックス・パッドで光沢を加える手法が定番。ハーモニーは端正で、コード置換やイントロ/エンディングの再構築にも相性が良い。

歴史的背景

トーキー草創期のレビュー映画『キング・オブ・ジャズ』(1930年)は、ポール・ホワイトマン楽団の華やかなサウンドと映像表現で話題となり、本曲もその文脈で広く知られた。公開後しばらくは当時の流行歌の一つとして扱われたが、戦後のアレンジ刷新を経て再び脚光を浴びる。特に1950年代のスウィング再評価の中で、洗練されたアレンジと都会的感性により“古い恋の回想”という物語がモダンな魅力へと更新されたことが、今日のスタンダード化を後押しした。

有名な演奏・録音

初期の代表は、ポール・ホワイトマン楽団+ザ・リズム・ボーイズによる1930年の演奏(映画『キング・オブ・ジャズ』)。決定打となったのは、フランク・シナトラが『Songs for Swingin’ Lovers!』(1956)で残したヴァージョンで、ネルソン・リドル編曲の洒脱なスウィングは本曲の再評価を決定づけた。その後も多くのジャズ・ボーカリストやビッグバンドがレパートリーに取り入れ、バラード的な解釈とスウィング解釈の両面で親しまれている。

現代における評価と影響

It Happened In Monterey は、映画発のポピュラー・ソングが時代を超えて更新される好例として位置づけられる。ボーカルの語りの妙、アレンジの自由度、テンポ選択の幅広さが教育現場やステージで重宝され、スタンダード教材としても定着。クラブ・ギグからコンサートホールまで場面を選ばず映えるため、セットリストの色彩を変えるピースとして信頼が厚い。シナトラ版の影響で、軽快なスウィング処理を出発点に各演者が物語性を再構築する伝統が受け継がれている。

まとめ

1930年の映画で誕生し、1950年代に新たな命を得たIt Happened In Monterey。端正なメロディと情緒的な歌詞は、バラードとスウィング双方で映え、時代ごとに解釈を許容する懐の深さを持つ。映画由来の華やぎと都会的洗練を併せ持つ本曲は、今後もジャズ・ボーカル/アレンジャー双方の重要レパートリーであり続けるだろう。