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Let’s Do It (Let’s Fall In Love)
- 作曲: PORTER COLE

Let’s Do It (Let’s Fall In Love) - 楽譜サンプル
Let’s Do It (Let’s Fall In Love)|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Let’s Do It (Let’s Fall In Love)」は、作曲・作詞ともにCole Porterによる1928年の作品。ブロードウェイ・ミュージカル『Paris』のために書かれたポピュラー・ソングで、その後ジャズ・スタンダードとして定着した。洒脱な言葉遊びと都会的ユーモアで知られ、Porterの初期を代表するヒットとして広く認知されている。形式は32小節のAABAが基本で、歌もの・器楽の双方で演奏される。
音楽的特徴と演奏スタイル
典型的なアメリカン・ソングブックの語法に則り、明瞭なAABA構成と機能和声を軸に展開。セカンダリー・ドミナントや循環進行が要所に現れ、メロディは語感を活かしたリズミカルな抑揚が特徴。テンポはミディアム・スウィングが定番だが、バラードやラテン風に再解釈されることも多い。歌唱では語り口の間合いとウィットをどう表現するかが肝で、器楽演奏ではAセクションのモチーフ処理とBセクションでの対比が即興の焦点となる。
歴史的背景
1920年代末、ブロードウェイとタンパン・アレーの隆盛期に登場。レビュー形式のショウとレコード産業の発展が相乗し、都会的洗練を備えたPorter作品は世相に合致して急速に普及した。本曲は、列挙的比喩を畳み掛ける“リストソング”的手法を印象づけた点でも重要で、以後のポピュラー・ソングにおける機知とダブル・ミーニングのスタイルを確立する一助となった。舞台由来ながら、ジャズ界での再解釈を通じて長期的な命脈を保った。
有名な演奏・録音
代表的録音としては、エラ・フィッツジェラルドが1956年の名盤『Ella Fitzgerald Sings the Cole Porter Song Book』で取り上げ、テキストの明晰な伝達とスウィング感で規範を示した。その後も多くのジャズ歌手やビッグバンド、サックスやピアノの器楽陣がレパートリーに採用。編曲面では、イントロの新作や転調、ブレイクを活かしたコール&レスポンスなど、多彩なアプローチが聴かれる。
現代における評価と影響
本曲は“Great American Songbook”の重要曲として教育現場やセッションで定番化。言葉遊びに富む歌詞は、時代性を含む表現があるため、近年は差し替えやアップデート版の歌詞を用いる例も見られる。舞台曲に端を発しつつ、ジャズの語法で磨かれたことで、ジャンル横断的に強い普遍性を獲得。録音・配信環境の進歩により新解釈が継続的に生まれ、若い世代のシンガーやアレンジャーにも刺激を与え続けている。
まとめ
「Let’s Do It (Let’s Fall In Love)」は、洗練された旋律と言語感覚が結び付いたPorter流ポピュラーの精髄であり、ジャズの現場で更新され続けるスタンダードである。舞台発の起源、明快なAABA形式、多彩なテンポ対応という強みが、歌唱・器楽の両面で長寿命のレパートリー性を生み、今なお解釈の余地を広く残している。