Lover Come Back To Me
- 作曲: ROMBERG SIGMUND

Lover Come Back To Me - 楽譜サンプル
Lover Come Back To Me|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Lover Come Back To Meは、作曲家Sigmund Rombergが手がけ、ブロードウェイのオペレッタ『The New Moon』(1928年)で初披露された楽曲。舞台起源のショー・チューンでありながら、後年ジャズの重要レパートリーへと定着した。作詞はOscar Hammerstein II。甘美でドラマティックな旋律線と、歌詞の切実な語り口が特徴で、ヴォーカル曲として知られる一方、インストゥルメンタルでも広く演奏されている。現在では“Great American Songbook”の一曲として、コンサート、レコーディング、ジャム・セッションで頻繁に取り上げられる存在だ。
音楽的特徴と演奏スタイル
舞台由来らしい大きな弧を描くメロディと明快な機能和声が核。循環進行やII-V進行が多用され、即興に乗せやすい設計になっている。テンポはミディアムからアップ・テンポのスイングで演奏されることが多く、ヴォーカルではルバートの導入から軽快なスイングへ切り替える演出も定番。ブリッジでエネルギーが持ち上がる構成のため、ソロの起伏を作りやすい。バラード解釈や4ビート主体のストレート・アヘッド、場合によってはラテン風の色付けなど、多彩なアレンジに馴染む汎用性も魅力である。
歴史的背景
1920年代後半のブロードウェイでは、欧州オペレッタの風合いとアメリカ流のジャズ・フィーリングが交差しつつあった。Rombergはその橋渡しを担った作曲家の一人で、本曲も舞台での成功を出発点に、レコードとラジオの普及とともに広く浸透。やがてスウィング時代を経て、クラブやダンスホールでのスタンダード曲として定着していく。舞台発のポピュラー曲がジャズの共通言語へ移行した典型例のひとつと言える。
有名な演奏・録音
映画版『The New Moon』でも取り上げられ、Jeanette MacDonaldやNelson Eddyの歌唱で親しまれた。その後はビリー・ホリデイ、エラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーンら名ヴォーカリストの解釈で知られ、ナット・キング・コール・トリオなど器楽陣のスイング・アプローチでも定番化。さらにバーブラ・ストライサンドが初期キャリアで取り上げるなど、世代を超えて録音が重ねられてきた。いずれのバージョンも、舞台的なドラマ性とジャズの推進力をどう共存させるかが聴きどころである。
現代における評価と影響
今日ではスタンダード集や教材にも広く収録され、ヴォーカル/インストの双方で入口曲として薦められることが多い。メロディの華やかさと明快なコード進行は、初心者のレパートリー拡充にも有用で、同時に表情付けやダイナミクスの練習曲としても優れる。コンサート・プログラムでは、ジャズとミュージカルの美点を同時に提示できる曲として評価が揺るがない。
まとめ
Lover Come Back To Meは、オペレッタ発のショー・チューンがジャズ・スタンダードへと昇華した好例。劇的な旋律と堅固な和声が、歌唱と即興の双方に豊かな表現の余地を与えてきた。歴史性と普遍性を併せ持つ本曲は、今後も幅広い演者と聴き手に支持され続けるだろう。