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Rum And Coca-cola

  • 作曲: AMSTERDAM MOREY,SULLIVAN JERI,BARON PAUL,GIRLANDO PAUL
#スイング#スタンダードジャズ
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Rum And Coca-cola - 楽譜サンプル

Rum And Coca-cola|歌詞の意味と歴史

基本情報

「Rum And Coca-cola」は、カリプソの語法を取り入れた英語のポップ・ソング。作曲者クレジットは AMSTERDAM MOREY, SULLIVAN JERI, BARON PAUL, GIRLANDO PAUL とされ、第二次世界大戦期にThe Andrews Sistersの録音で全米的な大ヒットとなった。商品名を題名に含む点や、米軍駐留地の風俗を描いた点で当時としては異色の内容で、戦時下アメリカのポピュラー音楽史を代表する一曲として知られる。音楽的には軽快な2拍系のグルーヴと口ずさみやすいリフレインが特徴で、ダンスホールにも適した親しみやすい作りである。

歌詞のテーマと意味

歌詞はトリニダード島の庶民的な日常を背景に、ラム酒とコカ・コーラという象徴的な組み合わせを介して、娯楽、観光、米軍駐留の影響を描く。遊興と消費の明るさの裏で、経済的現実や価値観の変容を示唆し、軽妙なユーモアと社会観察が共存する。母娘が「ヤンキー・ダラー」のために働くという有名な一節は、性的産業や外貨獲得の実態をほのめかし、単なる酒席の歌以上の含意を持たせている。ただし全体のトーンはキャッチーで、コーラスの反復が祝祭感を強め、聴衆に強い記憶を残す構成である。

歴史的背景

本曲はトリニダードのカリプソ文化に源流があり、メロディはライオネル・ベラスコの古い楽曲に遡るとされる。戦時中、米軍のカリブ海駐留を契機に現地歌が本土に伝わり、エンターテイナーのモーリー・アムステルダムらを介してアメリカ向けポップに編曲・出版された。その後、原曲由来をめぐり法的な争いが生じ、トリニダード側の作家に権利・補償が認められた経緯が記録されている。The Andrews Sistersの快進撃は1945年前後に頂点を迎え、同曲はビルボードで首位を獲得、戦後ポップ市場におけるカリプソ受容の先駆けとなった。

有名な演奏・映画での使用

代表的な録音はThe Andrews Sistersによるデッカ盤で、アメリカ市場における決定版として広く認知される。原詞に近い趣を持つLord Invaderのバージョンも、カリプソ史の資料として重要である。以後、ダンス・バンドやレトロ系ヴォーカル・グループにたびたび取り上げられ、編曲の自由度が高いことからステージ・ショウでも重宝されてきた。一方、具体的な映画での顕著な使用例は情報不明。

現代における評価と影響

「Rum And Coca-cola」は、ポピュラー音楽における文化交流と知的財産の問題を同時に映し出す事例として研究・言及が続く。カリプソの語り口を主流ポップへ架橋した功績は大きく、のちのワールド・ミュージック受容やカリブ音楽ブームの前史として位置づけられる。また、ブランド名が楽曲内で機能する手触りは、商業社会と大衆音楽の関係を考える上でも示唆的で、戦時・占領・観光といったキーワードを読み解く教材としても活用されている。今日でもスウィング系イベントやヴィンテージ志向のステージで定番曲として取り上げられることが多い。

まとめ

軽快なコーラスに社会的含意を織り込み、戦時下アメリカの耳にカリプソの魅力を届けた「Rum And Coca-cola」。The Andrews Sistersの大ヒットによって世界的知名度を獲得し、同時に原曲由来や権利の問題を可視化した。本曲は単なる酒席の歌を超え、文化接触とポップ・ミュージックのダイナミズムを体現する歴史的作品である。