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Song From M*A*S*H (Suicide Is Painless)

  • 作曲: ALTMAN MIKE,MANDEL JOHNNY
#スタンダードジャズ
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Song From M*A*S*H (Suicide Is Painless) - 楽譜サンプル

Song From M*A*S*H (Suicide Is Painless)|作品の特徴と歴史

基本情報

「Song From M*A*S*H(Suicide Is Painless)」は、映画『M*A*S*H』(1970年、監督:ロバート・アルトマン)の主題歌として書かれた楽曲。作曲はJohnny Mandel、作詞は監督の息子Mike Altman。映画では歌詞付きで用いられ、のちにテレビシリーズ『M*A*S*H』(1972〜1983)では、主にインストゥルメンタル版がオープニングテーマとして採用された。原題に含まれるフレーズは作品世界のダークな諧謔を象徴し、映画音楽史上でも特異な存在感を放つ。

音楽的特徴と表現

穏やかなテンポと物憂い旋律、シンプルで流麗な和声進行が核。柔らかなアレンジにより、戦争風刺という過酷な題材に対し、真逆の優美さと静けさで対照を生む。メロディは覚えやすく、繰り返しの構造が余韻を強める一方、短調的な響きが内省的なムードを醸成。歌詞は厳密な引用を避けるが、死と苦痛に関する冷静で皮肉な視座を持ち、映像のブラックユーモアと相互補完的に機能する。結果として、単体のポップ・ソングと映画音楽の両面で印象に残る設計となっている。

歴史的背景

1970年前後のアメリカ映画界はニュー・シネマの潮流の中にあり、既存の価値観への懐疑や反戦意識が顕在化していた。『M*A*S*H』は朝鮮戦争を舞台にしつつ、当時の社会空気を反映した風刺性を帯びる。その中で本曲は、過度な感情誘導を避ける繊細な筆致で、虚無感と諧謔のバランスを表現。従来の英雄的マーチとは異なる主題歌が採用されたことは、映画音楽の語法を拡張し、後年の反戦映画・ドラマにおける“静けさで語る”アプローチにも示唆を与えた。

使用された映画・舞台(該当時)

本曲は映画『M*A*S*H』(1970)で初出。劇中では重要な場面に歌唱付きで用いられ、ブラックコメディの核となる情緒を形成した。テレビシリーズ『M*A*S*H』では旋律が継承され、オープニングなどで器楽版が反復して流れることで、視聴者に強固な記憶痕跡を残した。映画とテレビで同一テーマが異なる形(歌唱/インスト)で機能する事例として、メディア横断的なモチーフ運用の好例とされる。

現代における評価と影響

半世紀を経ても、哀感とアイロニーの共存は色褪せない。映画主題歌としての完成度に加え、スタンダード的に多様な編成で演奏・カバーされ続け、ポピュラーと映画音楽の境界を越える受容を獲得している。テレビ版のインストゥルメンタルも広く認知され、映像と音の一体化によるブランド形成のモデルケースとなった。配信時代においても検索・視聴導線が活発で、映画音楽の象徴的テーマとして定着している。

まとめ

「Suicide Is Painless」は、静謐な美しさで痛烈な風刺を包み込む希有な主題歌。映画・テレビ双方で機能し、旋律とコンセプトの強度が長期的な評価を支える。作曲Mandelと作詞Altmanの協働が生んだ、映画音楽史の重要曲である。