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Cape Verdean Blues (The)

  • 作曲: SILVER HORACE
#スタンダードジャズ
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Cape Verdean Blues (The) - 楽譜サンプル

「Cape Verdean Blues (The) |楽曲の特徴と歴史」

基本情報

「The Cape Verdean Blues」は、ジャズ・ピアニスト兼作曲家ホレス・シルヴァーが作曲したインストゥルメンタル曲。初出はブルーノートから発表された同名アルバム(録音年1965年)で、クインテット〜セクステット編成による演奏が基準とされる。タイトルが示す通り、シルヴァーのルーツであるケープヴェルデ(父方)へのオマージュが込められており、彼の代表的作風であるキャッチーなリフ、ソウルフルなグルーヴ感、明快な構成美が凝縮されている。歌詞は存在せず、純粋な器楽曲として認知されている。

音楽的特徴と演奏スタイル

本曲はハード・バップを土台に、ブルース的語法とダンサブルなリフが前面に出る。ホーンによるユニゾン/ハーモニーのテーマ提示、ピアノのコンピングとベースの堅牢なウォーキング、ドラムの推進力が一体となり、ソロではコール&レスポンス的なフレーズ展開が生きる。リズム面にはアフロ・ラテン的な色合いがほのかに感じられ、シルヴァーのメロディメーカーとしての才覚が、覚えやすい主題とグルーヴのうねりで発揮される。高度な複雑さよりも“歌心”とリフの魅力で聴かせる点が特徴で、アンサンブルのまとまりとリズム隊のドライブが演奏の要となる。

歴史的背景

1960年代半ばのブルーノート期、ホレス・シルヴァーはハード・バップにソウル、ゴスペル、ラテンの要素を取り入れ、親しみやすい名曲を次々に発表した。「The Cape Verdean Blues」は、彼の出自にまつわる文化的背景への敬意を題に掲げた一作で、当時のニューヨーク・ジャズ・シーンの活気と、国際的な音楽的影響の交差点を体現する。シルヴァー特有の明快な作曲術は、リスナーとプレイヤー双方に強い訴求力を持ち、作品自体が時代の空気と個人的ルーツの架け橋となった。

有名な演奏・録音

決定的な参照録音はホレス・シルヴァーのオリジナル・セッション(ブルーノート/録音年1965年)。当時のホーン・セクションにはジョー・ヘンダーソン(テナー・サックス)やウディ・ショウ(トランペット)、さらにJ.J.ジョンソン(トロンボーン)らが参加し、テーマの切れ味とソロの推進力を強く印象づけた。以後、シルヴァー自身のライヴや多くのジャズ・グループのレパートリーとして取り上げられ、演奏テンポやソロ配分に各バンドの個性が反映される定番曲となっている。

現代における評価と影響

「The Cape Verdean Blues」は、ハード・バップの語法を“歌える旋律”と“踊るグルーヴ”で体現した作例として評価が高い。アドリブの踏み出しやすさ、テーマの存在感、アンサンブルのまとまりやすさから、教育現場やセミプロ〜プロの現場でも重宝される。作曲面では、地域的ルーツや個人史をタイトルやグルーヴ設計に落とし込む手法の好例として参照され、今日のミュージシャンにも影響を与え続けている。

まとめ

本曲は、ホレス・シルヴァー流ハード・バップの魅力を端的に伝えるインストゥルメンタル。覚えやすいテーマ、推進力のあるリズム、ソロの映える構造により、録音から半世紀以上を経てもなお瑞々しさを保つ。ケープヴェルデへの敬意を込めた題名が象徴する通り、個人的ルーツをジャズの普遍的言語に結晶化した一曲として、聴き手と演奏者の双方に長く愛されている。