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Jelly Roll Blues

  • 作曲: MORTON FERDINAND JOSEPH,MORTON JELLY ROLL
#スタンダードジャズ#ジプシージャズ
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Jelly Roll Blues - 楽譜サンプル

Jelly Roll Blues |楽曲の特徴と歴史

基本情報

Jelly Roll Bluesは、作曲家Jelly Roll Morton(本名Ferdinand Joseph Morton)による1915年発表のジャズ曲。楽譜として早期に出版された数少ない初期ジャズ作品の一つで、後に伝統的ジャズの定番となった。形式はブルースを基調とする複数ストレイン構成。調性・テンポ・編成は演奏者により異なるため情報不明。タイトルに含まれる“Jelly Roll”は当時の俗語でもあり、作品の時代性を反映している。

音楽的特徴と演奏スタイル

ラグタイム由来の整然とした書法に、モートン特有の“Spanish tinge(ハバネラ系のアクセント)”が加わるのが最大の特徴。12小節ブルース感と多部合奏のポリフォニー、ブレイクやストップタイム、コール&レスポンスが随所に配置され、個人の即興とアンサンブルの緻密さが両立する。ピアノ独奏では左手のオスティナートと右手の装飾、アンサンブルでは管・リズム隊の会話が聴きどころ。ダンス性と作曲的設計のバランスが秀逸である。

歴史的背景

1910年代、ニューオーリンズのダンス音楽がシカゴへ広まる中、モートンはジャズに“作曲と編曲”の概念を明確に持ち込み、舞曲から鑑賞音楽へと押し上げた。Jelly Roll Bluesは1915年に発表・出版され、印刷物として流通したことでレパートリー化が進み、演奏家が共通の楽曲語彙を共有する土台となった。ラグタイムからジャズへの移行期を象徴する存在であり、後続の作曲型ジャズの先駆けとして扱われることが多い。

有名な演奏・録音

代表的録音は、Jelly Roll Morton’s Red Hot Peppersによる1926年の名演。歯切れの良いアンサンブル、クリアなブレイク、ソロの受け渡しが理想形として知られ、後代の再現公演でも基準とされる。以後、伝統的ジャズ・バンドやピアニストが継続的に録音・演奏しており、ニューオーリンズ~シカゴ系のレパートリーとして定着。個別の録音レーベル・編成の差異は多岐にわたるため網羅情報は情報不明。

現代における評価と影響

本作は“初期に出版されたジャズ曲”として教科書的な位置を占め、ニューオーリンズ~シカゴ期の様式研究やアンサンブル訓練の教材として頻繁に扱われる。ハバネラの味付け、ストレインの入れ替え、決めと即興の配分は、スウィング以前の美学を学ぶ鍵であり、歴史的演奏様式の再現にも適する。今日もトラッド・ジャズのステージや音楽教育で取り上げられ、ジャズの構築性を示す好例として評価が揺るがない。

まとめ

Jelly Roll Bluesは、ブルースの感覚と作曲的設計、そして“Spanish tinge”が結晶した初期ジャズの代表作。1915年の早期出版と1920年代の名録音を通じ、ジャズが即興と構築性を兼備する音楽であることを鮮やかに示した。入門者にも研究者にも示唆が多く、伝統様式の理解と演奏技法の両面で、今なお重要な座標であり続けている。