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Honeysuckle Rose
- 作曲: WALLER THOMAS FATS

Honeysuckle Rose - 楽譜サンプル
Honeysuckle Rose|楽曲の特徴と歴史
基本情報
『Honeysuckle Rose』は、ピアニスト/作曲家ファッツ・ウォーラー(本名 Thomas “Fats” Waller)による1929年の楽曲。作詞はアンディ・ラザフ。歌詞付きでも器楽でも広く親しまれ、今日では代表的なジャズ・スタンダードである。形式は32小節のAABA。キーやテンポは演者により幅があるが、スウィング感を核に据える点が共通する。
音楽的特徴と演奏スタイル
主旋律は跳躍とシンコペーションが巧みに配置され、明快で記憶に残る。和声進行はⅡ-Ⅴやセカンダリー・ドミナントが要所を締め、Aセクションは循環的な機能和声、B(ブリッジ)は転調感と推進力でコントラストを作る。中速からミディアムアップのスウィングで演奏されることが多く、ストライド・ピアノ、スモール・コンボ、ビッグバンドのいずれにも適合。リハーモナイズではトライトーン・サブやクロマチック・アプローチが定番で、イントロ/エンディングの付加、トレード・フォーズなどジャム的発展も映える。
歴史的背景
本作はアメリカのポピュラー音楽がジャズと濃密に交差した時期に生まれ、ウォーラーとラザフの名コンビが手がけた代表作の一つとして早期から認知された。作曲者自身の演奏と録音を皮切りに、1930年代にはスウィング・バンドのレパートリーへ急速に拡散。戦後もビバップ以降の語法で再解釈され、世代を超えて演奏され続けてきた。
有名な演奏・録音
名演は数えきれない。作者ファッツ・ウォーラーのピアノ/ヴォーカル版は原点として重要。ベニー・グッドマンのスモール・グループによるスウィング感あふれるテイク、エラ・フィッツジェラルドのスキャットを交えた歌唱、ルイ・アームストロングの表情豊かな解釈、ジャンゴ・ラインハルトのギター・ワーク、アート・テイタムやオスカー・ピーターソンのヴィルトゥオーゾなピアノも広く知られる。各演奏はテンポ、キー、リハーモナイズの選択で個性を際立たせる好例だ。
現代における評価と影響
現在もセッションで頻出する基礎曲として位置づけられ、教材やリードシート集に収録されるなど学習面での重要度が高い。メロディの歌わせ方、4ビートの乗り方、AABAのフォーム運用、即興のモチーフ展開を総合的に学べるため、初中級者からプロまで幅広く取り上げる。多彩な解釈が可能で、古典的スウィングから現代的ハーモニーまで受け止める懐の深さも評価される。
まとめ
魅力的な旋律と堅実な和声、発展性の高いフォームを備えた『Honeysuckle Rose』は、時代を超えて奏者と聴き手を結ぶジャズの礎石である。入門にも再発見にもふさわしい一曲として、今後も演奏の現場で生き続けるだろう。