Africa
- 作曲: COLTRANE JOHN

Africa - 楽譜サンプル
Africa |楽曲の特徴と歴史
基本情報
ジョン・コルトレーン作曲の「Africa」は、1961年のアルバム『Africa/Brass』(Impulse!)で初めて広く発表された長尺のインストゥルメンタル。小編成のカルテット路線から一転し、金管・木管を多数加えた大編成で録音された点が大きな特徴で、歌詞は存在しない。タイトルが示す通りアフリカ的なリズム感や音色への関心が投影され、リーダー期の方向転換を示す重要作として知られる。
音楽的特徴と演奏スタイル
低音域のオスティナートとペダル・ポイントの上にモーダルな旋律が展開し、重厚なチューバやフレンチホルンのリフが音響的な柱を作る。ドラムはポリリズミックに推進し、コルトレーンのテナー・サックスは長いアドリブでダイナミクスを大きくうねらせる。オーケストレーションにはエリック・ドルフィーやマッコイ・タイナーが関与し、管群の分厚いハーモニーとドローン的テクスチャーが楽曲のスピリチュアルな性格を強調している。
歴史的背景
インパルス・レコード移籍直後のコルトレーンは、モードジャズの可能性を拡張し、非西洋的な音階やリズムへの探求を深めていた。「Africa」はその志向を大編成で具体化した最初期の成果のひとつで、以後の『Impressions』やスピリチュアルな時期へ連なる出発点として位置づけられる。録音年は1961年。詳細な制作過程の一部は資料により異なるが、時代的転換を告げる作品であることは広く共有されている。
有名な演奏・録音
最も知られる音源は『Africa/Brass』収録のスタジオ・ヴァージョンで、長大なフォームとオーケストラルなサウンドが堪能できる。後年の拡張盤『The Complete Africa/Brass Sessions』では別テイクや追加素材も聴取可能。ライヴでの定番曲というよりは、スタジオ制作に重心を置いたレパートリーで、編成の規模ゆえに再現には高いアレンジ能力が求められる。
現代における評価と影響
「Africa」は、ビッグアンサンブルでモーダル語法を追究した先駆的試みとして評価される。低音重視の配列や持続音の活用、重層的リズムは、その後のスピリチュアル・ジャズや現代ビッグバンドに影響を与え、再評価と再演の対象となっている。学術的文脈でも、アフロセントリズムや音響設計の観点から論じられる機会が多い。
まとめ
コルトレーンの「Africa」は、モーダルな発想を大編成の設計にまで拡張した画期的なインスト曲であり、1961年という節目を象徴する一篇である。重厚な低音のうねりと長大な即興、管楽器群の色彩は、今も新鮮なスケールで聴き手を包み込む。初めて触れるなら『Africa/Brass』の収録版が入口として最適だろう。