Blues On The Corner
- 作曲: TYNER MC COY

Blues On The Corner - 楽譜サンプル
Blues On The Corner |楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Blues On The Corner」は、ピアニスト/作曲家マッコイ・タイナーによるインストゥルメンタルのジャズ・ブルース。初出はBlue Noteの名盤『The Real McCoy』(1967年)。録音は1967年4月21日、ニュージャージー州エングルウッド・クリフスのVan Gelder Studio。編成はMcCoy Tyner(p)、Joe Henderson(ts)、Ron Carter(b)、Elvin Jones(ds)。歌詞はなく、一般的な12小節のブルース・フォームを基調としている。
音楽的特徴と演奏スタイル
リフ主体の端的なテーマと強靭なスウィング感が核となる。タイナー特有の4度堆積和音やペンタトニック/ブルース・スケールを駆使したアドリブ、左手の厚みあるコンピングが推進力を生む。テナーは骨太なブロウでコール&レスポンスを作り、ドラムは3連系の推進とシンコペーションで熱量を高める。アンサンブルはシンプルだが、和声とリズムの張力が高く、短いフォームの中でダイナミクスの振幅が大きい。
歴史的背景
本曲を収めた『The Real McCoy』は、タイナーがジョン・コルトレーンのグループを離れた後の代表的リーダー作で、Blue Note移籍第1作とされる。1960年代後半のポスト・バップ文脈において、伝統的なブルース形式にモーダルな語法を接続する試みを示し、当時のニューヨーク・シーンのエネルギーを刻印した一枚である。アルバム終盤を引き締める本曲は、タイナーのブルース感覚と現代的語法の交差点に位置づけられる。
有名な演奏・録音
基準となるのは1967年のオリジナル録音で、ピアノ、テナー、ベース、ドラムのカルテットによる緊密なやり取りが聴きどころである。以後も本曲はコンサートで取り上げられることがあり、テンポ設定やコーラス数を拡張した演奏例も見られる。編成はトリオからカルテットまで幅広く、リフ構造を活かしたアレンジの自由度が高い点も魅力だ。
現代における評価と影響
ピアニストのみならずサックス奏者にとっても、現代的ジャズ・ブルースの語彙を学ぶ手がかりとして参照されることが多い。タイナー流の4度的ヴォイシングとブルース語法の融合は今日でも研究対象で、アドリブ構成やコンピングの設計、リズムの前進感を体得する教材として有用である。1960年代Blue Noteサウンドのエッセンスを体現する一曲として評価が定着している。
まとめ
「Blues On The Corner」は、伝統と革新が交差するジャズ・ブルースの好例であり、コンパクトな形式の中にマッコイ・タイナーの音楽観が凝縮されている。初学者にはブルース形式の実践素材として、中級者以上にはモーダルな発想とリズム運用の研究素材として価値が高い。歌詞情報は存在せず、インスト作品として現在も広く親しまれている。