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Route 66
- 作曲: TROUP BOBBY

Route 66 - 楽譜サンプル
Route 66|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Route 66(正式題名は “(Get Your Kicks on) Route 66”)は、作曲家ボビー・トゥループが1946年に発表した楽曲。ナット・キング・コール・トリオの録音で広く知られ、以後ジャズ/R&B/ロックの枠を超えて演奏されるスタンダードとなった。歌詞は米国の国道66号線に沿って主要都市名を列挙し、旅の高揚感を描く。作曲・作詞はトゥループ自身。今日でもセッションやライブの定番として世界中で親しまれている。
音楽的特徴と演奏スタイル
基本構造は12小節ブルースを土台にしたシンプルで汎用性の高いフォーム。スウィングないしシャッフルのグルーヴが典型で、ウォーキング・ベースと軽快なバックビートがドライヴ感を生む。メロディは覚えやすく、ブレイクやコール&レスポンスを取り入れた編曲も多い。テンポはミディアムが主流だが、ジャンプ・ブルース的な速い解釈、ゆったりとしたラウンジ風、ロックンロール調のストレート8など多彩。ソロの自由度が高く、サックスやギターの即興映えするレパートリーとして定着している。
歴史的背景
第二次世界大戦後のアメリカでは自動車社会が加速し、東西を結ぶ国道66号線は「母なる道」として象徴的存在だった。ボビー・トゥループは東海岸から西海岸へ向かう旅の途上で本作の着想を得たと伝えられ、地名を並べるアイデアにより、当時の移動・開拓への憧れを音楽化した。1946年という発表時期は、戦後の活気と自由な空気感がポピュラー音楽に反映されはじめた節目であり、本曲はそのムードを端的に捉えた一例といえる。
有名な演奏・録音
オリジナルの決定版的存在はナット・キング・コール・トリオの1946年盤。以降、チャック・ベリーがロックンロールとして取り上げ、ローリング・ストーンズも初期レパートリーに収録して若い世代へ拡散させた。ニューウェーブ以降ではディペッシュ・モードがエレクトロニックな解釈を提示。2006年の映画『カーズ』ではジョン・メイヤーのカバーが使用され、21世紀のリスナーにも再認識された。ジャズ界でも小編成からビッグバンドまで幅広く録音され、スタイル横断の代表的ナンバーとして息長く愛奏されている。
現代における評価と影響
Route 66は「地名を並べる旅歌」というユニークな歌詞構造と、汎用度の高い12小節ブルースという二つの強みで、教育・セッション双方の現場で重宝される。観客に即時性のあるイメージを喚起できるため、ライブのオープナーや中盤の起爆剤としても有効。広告や映像作品での採用例も多く、アメリカン・ロードカルチャーの象徴として機能し続けている。ジャンルを超えるカバーの蓄積は、ポピュラー音楽の共通語としてのスタンダードの意義を改めて示している。
まとめ
ボビー・トゥループ作「Route 66」は、戦後アメリカの旅情とスウィングするブルースの快感を合一させた名曲である。ナット・キング・コールの洗練、ロック勢の奔放な解釈、現代的サウンドへの適応など、時代ごとに姿を変えながらも核となるドライヴ感は不変。演奏者には即興の楽しみ、聴き手には景色の広がりを提供する、真にスタンダードと呼ぶにふさわしい一曲だ。