Havona
- 作曲: PASTORIUS JACO

Havona - 楽譜サンプル
Havona |楽曲の特徴と歴史
基本情報
ジャコ・パストリアス作曲の器楽曲。ウェザー・リポートの名盤『Heavy Weather』(1977)に収録され、アルバムを締めくくるトラック。演奏はジョー・ザヴィヌル(key)、ウェイン・ショーター(sax)、ジャコ(b)、アレックス・アクーニャ(ds)、マノロ・バドレナ(perc)。エレクトリック・ベースが主導する先鋭的なアンサンブルが聴きどころで、歌詞は存在しない。
音楽的特徴と演奏スタイル
高速の4拍子を基調に、緻密なユニゾンと対位で組まれた主題、頻繁な転調感を伴う和声が特徴。ベースは伴奏を越えて主旋律と即興を担い、ラインとコード的アプローチを往復する。シンコペーションの多いリズムと明快なダイナミクス設計により、アンサンブルの推進力が際立つ。ショーターのサックスとザヴィヌルのキーボードが色彩とテクスチャーを与え、各ソロは構造の中で緊張と解放を描く。
歴史的背景
1976年にジャコが加入したウェザー・リポートは、翌年『Heavy Weather』で商業的・芸術的成功を収めた。「Havona」は同作の終曲として、バンドの成熟した作曲術とアンサンブルの緊張感を象徴する位置づけにある。フュージョンの語法が熟成した1977年という時代性の中で、電気楽器の表現力とジャズ的インタープレイの両立を示した代表作の一つ。
有名な演奏・録音
標準的な参照はオリジナルのスタジオ録音。ライヴでの演奏歴はあるが、特定公演や公式音源への収録状況は情報不明。メンバー個別の再演や他アーティストの網羅は情報不明だが、研究・採譜の対象として知られる。まずは『Heavy Weather』のアルバム版で曲構造とアンサンブルの精度を確認するのが推奨される。
現代における評価と影響
エレクトリック・ベースの役割を再定義した曲として高く評価される。作曲と即興の結合、合奏と分解の配置、ベース主体の旋律設計は、ジャズ・フュージョンの重要なモデルであり、教育現場やプロの現場で分析・演奏の題材となることがある。ベーシストのみならず、作編曲やリズム・セクション設計の観点でも示唆に富む。
まとめ
技巧と構造美を兼ね備えた「Havona」は、現在も新鮮さを失わない。1977年の文脈の中で生まれた先鋭性は、精緻な作曲と緊密なインタープレイによって普遍性へと昇華された。初聴は『Heavy Weather』のエンディングから。そこにジャコの作曲家・奏者としての到達点が刻まれている。