あなたのポケットにスタンダードの楽譜集をソングブック12keyに移調できる楽譜アプリ「ソングブック」

Three Views Of A Secret

  • 作曲: PASTORIUS JACO
#洋楽ポップス#コンテンポラリー#フュージョン
App StoreからダウンロードGoogle Playで手に入れよう
← 楽曲一覧に戻る

Three Views Of A Secret - 楽譜サンプル

Three Views Of A Secret |楽曲の特徴と歴史

基本情報

Three Views Of A Secret は、ベーシストのジャコ・パストリアスが作曲したインストゥルメンタル作品。最初期の公式な録音はWeather Reportのアルバム「Night Passage」(1980年)で確認でき、その後、ジャコ自身のアルバム「Word of Mouth」(1981年)にてオーケストラ的スケールで再構築された。歌詞は存在せず、メロディ重視のバラードとしてジャズ界で定着。高度なハーモニー感と独特の叙情性で、現代では“モダン・ジャズ・スタンダード”として多くの演奏家に取り上げられている。

音楽的特徴と演奏スタイル

大きな特徴は、歌うように滑らかな主旋律と、移ろいのある和声展開。フレットレス・ベースの温かい音色を軸に、ピアノ/シンセやサックス等が旋律を受け渡し、ダイナミクスを広く扱う。小編成では静かな導入から徐々に厚みを増す構成が定番で、長いサスティンと繊細なビブラートが表情を決める。大編成アレンジでは内声部の動きが豊かで、コーラス風の重ねやブラスのパッドが色彩感を強調。ソロは過度な技巧に走らず、旋律線の伸びや余白を重視する演奏が好まれる。

歴史的背景

1970年代後半から80年代初頭、フュージョンは複雑なリズムと電気的サウンドを拡張する一方で、歌心を持ったバラードも重視され始めた。ジャコはWeather Reportで世界的評価を得ると同時に、作編曲家としての構想を「Word of Mouth」で本格化。この曲はそうした転換点を象徴し、ベーシスト主導の作曲でも情緒的・構造的な完成度を示し得ることを証明した。音色、ダイナミクス、アンサンブル設計のすべてで、従来の“ベース曲”のイメージを更新した。

有名な演奏・録音

代表的な録音は、Weather Report「Night Passage」(1980年)収録版と、ジャコの「Word of Mouth」(1981年)収録版。前者はコンボ的な親密さと即興の呼吸感が際立ち、後者は重厚なアレンジで旋律のスケール感を引き上げた対照的な名演である。以降、ビッグバンドや音楽大学のアンサンブルでも頻繁に演奏され、ベーシストのみならず管・鍵盤奏者のレパートリーとしても定着。編成やテンポの解釈に幅があり、編曲の素材として人気が高い。

現代における評価と影響

Three Views Of A Secret は、フレットレス・ベースの表現力を象徴する楽曲として教育現場でも重視される。旋律中心の美学、繊細な音色設計、緻密なハーモニー運用は、現代ジャズの作編曲における指標となり、演奏家に“音を置く間”や“呼吸”の重要性を再認識させる。配信時代においても各種カバーやライブ動画が継続的に共有され、世代を超えて楽曲価値が更新され続けている点が特徴だ。

まとめ

本作は、ジャコ・パストリアスの詩情と構築力が最も明快に結晶した一曲。コンボから大編成まで映える柔軟性を持ち、奏者の音色美とアンサンブル力を照らし出す。Weather Report版と「Word of Mouth」版の両方に触れることで、作品の多面性と時代的意義がより鮮明になる。歌詞は持たないが、言葉以上の物語性を宿す現代ジャズの名曲である。