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Allen's Alley
- 作曲: BEST DENZIL DE COSTA

Allen's Alley - 楽譜サンプル
Allen's Alley|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Allen's Alley(別名:Wee)は、ドラマー/作曲家デンジル・デ・コスタ・ベストの代表的ビバップ曲。器楽曲であり正式な歌詞は存在しないとされる。AABAの32小節形式に乗る快活なヘッドと、即興性を引き出すコード進行が核。発表年や初演の詳細は情報不明だが、1940年代後半のニューヨーク・シーンで急速に普及した。表記はAllen’s Alley/Allen's Alley/Weeと複数あり、出版や録音によってタイトルが揺れる点も特徴である。
音楽的特徴と演奏スタイル
本曲は一般に“I Got Rhythm”のコード進行を基盤とするいわゆるリズム・チェンジ系のコンポジションとして知られる。アップテンポからミディアム・アップで演奏されることが多く、ヘッドはユニゾンまたはハーモニーで切り立つビバップ・ライン。ソロではドミナントの代理やトライトーン・サブ、循環するII–V、ターンアラウンドの置換などが効果的で、4バースのドラム交換も映える。終結はタグ付けやペダルを用いたエネルギッシュなコーダが定番で、小編成クインテット編成での実演に強い。
歴史的背景
ベストはボストン出身の名ドラマーで、作曲面でも「Move」などの名曲を残した。Allen's Alleyは、52丁目のジャム文化とビバップの語法が結晶した時代の産物で、速いテンポでの明快なライン構築と、和声の機知を競う演奏慣行を象徴する。タイトルの由来や命名経緯の詳細は情報不明だが、別名Weeとともに広く流通し、戦後モダン・ジャズのレパートリーに定着した。
有名な演奏・録音
1940年代後半のディジー・ガレスピーのセッションで早くから取り上げられ、以降多くのトップ・プレイヤーがレパートリー化。とりわけ1953年の伝説的コンサート「Jazz at Massey Hall」では、チャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピー、バド・パウエル、チャールス・ミンガス、マックス・ローチが火花を散らす白熱のテイクを残し、楽曲の認知を決定づけた。録音のバリエーションは多く、編成やテンポにより表情が大きく変わる。
現代における評価と影響
現在もジャム・セッションや音楽教育の現場で頻出する標準曲のひとつ。リズム・チェンジの運用、フレージングの精度、テンポ耐性、インタープレイの反射神経など、ビバップの基礎体力を総合的に鍛えられる教材として重宝される。管楽器は明瞭な音価とブレス配分、ピアノやギターはヴォイシングの簡潔さ、ベースとドラムは推進力の維持が評価の鍵となる。
まとめ
Allen's Alleyは、シンプルな形式に高度な即興言語を凝縮したビバップの精髄。別名Weeとしても親しまれ、世代を超えて演奏され続ける理由は、骨太のスウィング感と自由度の高い和声設計にある。初めて取り組む際は中速で構造を確認し、コーダの運びや4バースの設計まで含めたアレンジを共有すると、実演での説得力が格段に増す。