海を見ていた午後
- 作曲: 荒井 由実

海を見ていた午後 - 楽譜サンプル
海を見ていた午後|歌詞の意味と歴史
基本情報
「海を見ていた午後」は、作曲・作詞ともに荒井由実。初出は1974年のアルバム『MISSLIM』収録曲で、彼女の初期を代表するナンバーの一つとして知られる。シングルとしてのリリース有無は情報不明。編曲者やレーベルの詳細も情報不明だが、当時の都会的サウンドと繊細な歌世界が同作で確立された。本作は、海を望む店を舞台にした情景描写が印象的で、作品名とともに強いイメージを喚起する。
歌詞のテーマと意味
歌詞は、海辺の店で過ごした時間と、そこに結びつく記憶を静かに辿る構成。炭酸飲料のきらめきや港の遠景といったモチーフが、過去の感情を穏やかに呼び戻す装置として機能し、喪失や距離感を直接語らずに伝える。比喩と具体的風景が織り交ざることで、個人的な体験が普遍的な懐旧の情へと拡張される。叙情の密度は高いが、過剰に説明しない余白が聴き手の解釈を誘う。
歴史的背景
1970年代前半、日本のポップスはシンガーソングライター主導の“ニューミュージック”潮流へと移行した時期。荒井由実はその中心的存在で、洗練されたコード感と都市的な物語性を提示した。『MISSLIM』期の作品群は、フォーク的語り口から一歩進み、洋楽的ハーモニーと日本語の抒情の同居を実現。本曲もその文脈に位置づけられ、海と街が接する港町の空気を現代的な感性で結晶化している。
有名な演奏・映画での使用
オリジナル音源はアルバムを通じて広く親しまれ、本人コンサートでもたびたび取り上げられる定番曲として知られる。映画やドラマ、CM等での明確な使用記録は情報不明。カバーの網羅的情報や代表的録音のクレジットも情報不明だが、作品の知名度ゆえに各種ライブでの歌唱例は少なくないと考えられる(詳細は情報不明)。
現代における評価と影響
「海を見ていた午後」は、情景描写の精度とメロディの品位から、現在も高い支持を得る。舞台とされる横浜市内のレストラン「ドルフィン」に触発される聴き手も多く、楽曲と場所が相互に記憶を増幅させる“聖地”的な受容が見られる。SNS時代には、海景の写真とともに楽曲名が共有され、世代を超えて再解釈が進行。日本語ポップスにおける風景と感情の結びつきの典型として参照され続けている。
まとめ
海の光景を介して記憶と感情を静かに掬い上げる本曲は、荒井由実初期の美学を象徴する一篇である。過度な叙述を避け、風景と言葉の間に生まれる余白で物語る手つきは今も新鮮。初出年や舞台の手触りなど確かな事実に基づきながら、聴き手それぞれの記憶に接続する余地を残す点が、長く愛される理由だろう。