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All Or Nothing At All
- 作曲: ALTMAN ARTHUR, LAWRENCE JACK

All Or Nothing At All - 楽譜サンプル
All Or Nothing At All|楽曲の特徴と歴史
基本情報
All Or Nothing At Allは、Arthur Altman(作曲)とJack Lawrence(作詞)による1939年の楽曲。ジャズ/ポピュラーの名スタンダードとして知られ、初期録音にはHarry James and His Orchestraをバックに若きFrank Sinatraが参加したものがある。恋愛における「すべてか無か」を掲げる強い決意のメッセージを核とし、バラードからミディアム・スイングまで幅広いテンポで演奏される。形式は32小節の標準的なソング・フォーム。歌詞の全文は情報不開示。
音楽的特徴と演奏スタイル
旋律はロングトーンと跳躍を織り交ぜ、言葉のアクセントがフレージングを導く。和声は循環進行に半音階的な接続が加わり、抒情性と緊張感を共存させる。ヴォーカルではルバート気味のイントロからテンポを確立する解釈が定番で、器楽ではミディアムでのスウィング、あるいはバラードでの間合い重視が映える。リハーモナイズで終止感を遅延させるアプローチも有効。キーは演者に合わせ可変だが、メロディの張りを活かす中域設定が好まれる。
歴史的背景
1939年に書かれ、当初の反響は控えめだったが、1943年の再発売を機に大ヒットを記録。これによりSinatraの名が広く浸透し、戦中〜戦後のアメリカン・ソングブック黄金期を象徴する一曲として定着した。ジャズとポピュラーの橋渡しを担い、歌手主導の表現美学が台頭する時代精神とも響き合った点が歴史的意義である。以後、世代やスタイルを超えてレパートリー化され、スタンダード化の道を歩む。
有名な演奏・録音
決定版のひとつはHarry James楽団をバックにした1939年のSinatra唱。後年のSinatraによる再録音はフレージングとダイナミクスの成熟を示し、解釈の進化を物語る。器楽ではJohn Coltraneが1960年代初頭のアルバムで取り上げ、端正なテーマ提示から濃密な即興へ展開する構成が高評価を得た。以降、ピアノ・トリオやサックス、トランペットなど、多彩な編成で名演が蓄積されている。
現代における評価と影響
現在もヴォーカリストの必修曲として、また器楽奏者のバラード/ミディアムの教材曲として定着。タイトルの二項対立が放つ普遍性と、息の長いメロディが時代を超えて共感を呼ぶ。映画やドラマでの具体的使用は情報不明だが、配信時代でも新録音とライブ演奏が絶えず、標準曲としての生命力は健在。音大・ワークショップのレパートリーでも定番化している。
まとめ
情感豊かな旋律と確固たるメッセージ性を併せ持つ名曲。演奏では歌詞の意味に寄り添い、呼吸と間合い、語尾のニュアンスを丁寧に扱うことが説得力につながる。器楽陣はダイナミクスとハーモニー処理で物語性を強化したい。“All or Nothing”の決意を体現するように、表現の熱量を惜しみなく注ぐことで、この曲の本質が立ち上がる。