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Blues In Time
- 作曲: DESMOND PAUL

Blues In Time - 楽譜サンプル
Blues In Time|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Blues In Time」は、アルトサックス奏者ポール・デスモンド作曲のインストゥルメンタル。初出は1957年、ジェリー・マリガンとの双頭名義でVerveから発表された同名アルバム。編成はアルト+バリトン・サックス、ベース、ドラムスのピアノレス・カルテット。歌詞は存在せず、作詞者は情報不明。タイトル通りブルース語法を核にしたジャズ小品で、クール・ジャズ期を象徴するコラボレーションの一曲として知られる。
音楽的特徴と演奏スタイル
タイトルが示す通り、ブルース語法を基調としたシンプルな和声進行の上で、二管が対位法的に絡み合うのが最大の特徴。ハーモニーをピアノに頼らないため、音空間に余白が生まれ、ウォーキング・ベースと軽やかなドラムが推進力を担う。デスモンドは流麗で間合いに富む旋律線を提示し、マリガンは太い低音域で応答と補完を担うことで、クール・ジャズらしいクールネスと会話性を実現している。テーマ提示からソロ、エンディングまで、編成の特性を活かしたコール&レスポンスが明晰に設計されている点も聴きどころ。
歴史的背景
1950年代半ば、デスモンドはデイヴ・ブルーベック・カルテットで名を高め、マリガンはピアノレス編成の開拓者として知られた。両者が邂逅した本作は、ウェストコースト的洗練とニューヨークのスウィング感が交差する文脈で生まれ、クール・ジャズの成熟期を象徴する一曲となった。初出の録音・発表はいずれも1957年。レコーディングの詳細な日時・制作クレジットの一部は情報不明だが、Verveの良好な録音美学が反映されたクリアなサウンドが作品の印象を決定づけている。
有名な演奏・録音
代表的な音源は、デスモンド&マリガン名義アルバム『Blues In Time』(1957)。このトラックが決定版として広く参照され、両者の対話的アンサンブルの到達点の一例として位置づけられる。再発やコンピレーションでも継続的に紹介される一方、同曲は一般的な“ジャズ・スタンダード”ほど多くのカヴァーは確認されていない。追加の著名カヴァー情報は情報不明。
現代における評価と影響
今日では、二管の対話性やピアノレスならではの開放的サウンドを学ぶ教材的レパートリーとしても評価される。特にフロント同士の受け渡し、ダイナミクスの抑制と陰影、ブルース語法のミニマルな運用は、コンボ・アレンジやアドリブ研究の好例として取り上げられることが多い。ストリーミングや再発でアクセスが容易になり、クール・ジャズ文脈の再検証の中で静かな支持を集めている。
まとめ
「Blues In Time」は、ブルースの枠組みを用いながら、二管の対話と余白美で個性を刻んだクール・ジャズの佳曲。1957年のオリジナル録音を入り口に、編成設計、受け渡しの妙、音量コントロールに注目して聴くと、作曲者デスモンドのメロディ・センスとアンサンブル設計の巧みさがいっそう鮮明に伝わる。