Down With Love
- 作曲: ARLEN HAROLD

Down With Love - 楽譜サンプル
Down With Love|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Down With Love」は、作曲ハロルド・アーレン、作詞E.Y.ハーバーグによる1937年の楽曲。ブロードウェイ・ミュージカル『Hooray for What!』で初披露され、その後アメリカン・ソングブックの一角として定着した。軽妙な反恋愛ソングというユニークなテーマと、ジャズのスウィング感に乗る洒脱な言葉遊びが特徴で、ボーカル曲として広く歌い継がれている。
音楽的特徴と演奏スタイル
テンポは中速〜アップテンポで取り上げられることが多く、切れの良いシンコペーションと、皮肉を効かせたフレーズ回しが魅力。コードは機能和声を基盤にしつつ半音階的な動きが散りばめられ、アレンジ次第で軽妙なビッグバンドから小編成コンボまで柔軟に映える。歌詞は恋愛至上主義を茶化すウィットに富み、明瞭なディクションとテンポ感、間合いの妙が表現の鍵となる。ヴォーカルは語り口の説得力とスウィング感の両立が求められ、ブレイクやフェイク、スキャットの挿入も効果的だ。
歴史的背景
アーレンとハーバーグは後に映画『オズの魔法使い』で「Over the Rainbow」を生む名コンビ。本作はそれに先立つ時期のブロードウェイ仕事で、時代の華やぎと風刺精神を併せ持つ。初演の具体的配役・公演細部は情報不明だが、舞台を離れてからも録音で評価を高め、ジャズ・シンガーの重要レパートリーになった。出版後まもなくダンス・バンドやラジオ番組で広まり、標準曲としての地位を固めていく。
有名な演奏・録音
ブロッサム・ディアリーの洒脱なヴァージョン(Verve『Give Him the Ooh-La-La』収録)は代表格。軽やかなスウィングとアイロニーの効いた発声が、曲の本質を端的に示す好例だ。バーブラ・ストライサンドも初期のアルバムで取り上げ、演劇的な解釈で広い層に届けた。ほかにも小粋なスウィング編成やビッグバンドでの録音が多数あり、網羅的なディスコグラフィは情報不明ながら、女性ヴォーカルを中心に定番化している。
現代における評価と影響
機知に富む歌詞と軽やかなスウィングは、コンサートやクラブでのアクセントとして機能し、プログラムの緩急をつける一曲として重宝される。アレンジの自由度が高く、キー変更やテンポの遊び、ブレイクの配置、スキャットの導入など解釈の幅が広い点も魅力。音大・ワークショップでの教材としても扱いやすく、英語のディクションやスウィング・フィールの習得にも適している。
まとめ
「Down With Love」は、反恋愛をユーモアで包んだ言葉とスウィングの快感が融合した名曲。1937年生まれながら古びない洒脱さを保ち、世代や編成を超えて歌い継がれるジャズ・スタンダードとして確固たる地位を占めている。録音ごとの表情の違いも大きく、初学者から愛好家まで繰り返し楽しめるレパートリーだ。