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Fuchsia Swing Song
- 作曲: RIVERS SAM

Fuchsia Swing Song - 楽譜サンプル
Fuchsia Swing Song|楽曲の特徴と歴史
基本情報
「Fuchsia Swing Song」は、サックス奏者サム・リヴァース(表記:RIVERS SAM)によるインストゥルメンタル曲。1964年録音、1965年にBlue Noteから発表された同名アルバムの表題曲として知られる。作詞は存在せず歌詞もない。調性・拍子・曲構成の詳細は情報不明だが、ジャズの語法に根ざしたオリジナル作品である。
音楽的特徴と演奏スタイル
リヴァース特有の角ばった旋律線と広い音程跳躍、モードを軸にした和声処理が核。疾走感のあるスウィングの脈動上で、リズムは前後に揺れ、ポリリズム的な絡み合いが聴ける。ジャッキー・バイアードの自由度の高い和声付け、ロン・カーターの柔軟なウォーキング、トニー・ウィリアムスの反応的なドラミングが、テーマと即興の緊張感を際立たせる。ヘッド—ソロ—ヘッドの基本構成を踏まえつつ、フレーズの切り立ったアクセントと音価の伸縮が、同時代のポストバップ的推進力を生む。
歴史的背景
1960年代半ばのBlue Noteは、ハードバップからポストバップ/アヴァンギャルドへと拡張していた時期。リヴァースは1964年にマイルス・デイヴィスのバンドで短期間活動し、その直後に本作の録音へ臨んだ。アルフレッド・ライオンのプロデュース、ヴァン・ゲルダー・スタジオの鮮烈な音作りが、当時の前衛的志向を支えている。既存のコード進行に縛られない開放性を保ちつつ、スウィングの核を失わない姿勢が、時代の変化を象徴した。
有名な演奏・録音
基準となるのは、サム・リヴァース(ts)/ジャッキー・バイアード(p)/ロン・カーター(b)/トニー・ウィリアムス(ds)によるオリジナルのBlue Note盤。後年はRVGエディションなどのリマスターで再販され、CDや配信でも入手可能。オルタナティブ・テイクの有無や他アーティストによる代表的カバー、映画での使用例は情報不明。まずはアルバムの流れの中で聴くと、曲の位置づけとサウンド設計がより明確に把握できる。
現代における評価と影響
今日、本曲はハードバップの文法を踏まえつつ自由度を高めた「ポストバップの橋渡し曲」と評価されることが多い。セッションの定番というより、作曲と即興の統合を味わう鑑賞曲として位置づけられ、サックス奏者や作編曲家の学習素材としてもしばしば参照される。リズム・セクションの高密度なインタープレイは、以後のモダン・ジャズにおける会話的アンサンブルの先行例として語られている。
まとめ
独創的な旋律、開放的なハーモニー、反応速度の高いリズム隊が凝縮した「Fuchsia Swing Song」は、サム・リヴァースの美学を端的に示す1曲。Blue Note黄金期の探求心を刻む演奏として、今なお新鮮な刺激を与え続ける。まずはオリジナル録音で、そのダイナミズムを体感してほしい。