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Begin The Beguine
- 作曲: PORTER COLE

Begin The Beguine - 楽譜サンプル
Begin The Beguine|楽曲の特徴と歴史
基本情報
コール・ポーターが1935年に書いたスタンダード・ナンバー。初出はブロードウェイのミュージカル『Jubilee』(1935)で、原題は「Begin the Beguine」。のちに歌唱曲としても器楽曲としても広く親しまれ、ジャズ・レパートリーに定着した。出版年は1935年。舞台での初演歌手名は情報不明。一般的なライブやレコーディングでは、編曲者により調やテンポが柔軟に変えられる。
音楽的特徴と演奏スタイル
タイトルの“ベギン”は、フランス領カリブに由来するダンスで、ハバネラ系アクセントを含む4/4の緩やかなラテン・フィールが核となる。ポーターらしい洗練された旋律と転調、クロマティックな和声進行が魅力。最大の特徴は、典型的なAABAの32小節型とは異なる、約108小節に及ぶ長大な形式で、アドリブのコーラス設計やリズムの推進力をどう維持するかが演奏上の要点となる。スウィング、ラテン、バラードのいずれのスタイルでも映える。
歴史的背景
1930年代のアメリカでは、ラテン由来の舞踊とエキゾチシズムが流行し、ブロードウェイやダンスホールで広まりつつあった。本曲もその文脈で生まれ、舞台を飛び出してダンス・バンドのレパートリーに組み込まれていく。レコードとラジオ放送の浸透が普及を後押しし、スウィング時代の中核曲の一つとして知名度を高めた。
有名な演奏・録音
決定的なヒットは、アーティ・ショウ楽団による1938年のインストゥルメンタル録音(RCAブルーバード)。この成功で同楽団は一躍トップ・バンドとなった。ザビア・クガートはラテン寄りのアレンジで取り上げ、ラテン・ダンスの文脈でも支持を得た。さらに、フリオ・イグレシアスは1981年に「Begin the Beguine (Volver a Empezar)」で英国シングル・チャート1位を獲得している。
現代における評価と影響
現在もジャズ教育やビッグバンドの定番曲として扱われ、長大な曲形式を生かしたアレンジ手腕の見せ場として重宝される。ラテンとスウィングのフィールを横断する設計は、ステージ構成の多様性を生む手本となり、クラブ、ホール、フェスティバルなど多様な現場で演奏される。映画・テレビでの使用作品名は情報不明。
まとめ
『Begin The Beguine』は、ベギンのリズムと独特の長大形式を備えた、舞台発の楽曲がジャズ・スタンダードへ昇華した代表例である。1938年の名録音以降、歌唱・器楽の双方で受け継がれ、解釈の幅は今も広がり続ける。歴史的背景と編曲上の要点を押さえることで、楽曲の魅力は一層明確になる。