Dionne Warwick
A House Is Not A Home
- 作曲: BACHARACH BURT F

A House Is Not A Home - 楽譜サンプル
A House Is Not A Home|歌詞の意味と歴史
基本情報
バート・バカラック作曲、ハル・デヴィッド作詞によるバラード「A House Is Not A Home」は、1964年公開の同名映画のために書かれた楽曲。映画版ではブルック・ベントンが歌い、同年にディオンヌ・ワーウィックも録音して広く知られるようになった。独特のコード進行と緩やかなテンポ、語りかけるようなメロディが特徴で、バカラック作品の代表曲の一つと評価されている。
歌詞のテーマと意味
タイトルが示す通り、“家(house)”と“家庭・ぬくもり(home)”の対比を用い、愛する人を失った孤独と、再び寄り添いたい切実な願いを描く。家具や部屋といった具体物を挟み込みながら、感情の空白を浮き彫りにする叙景的な書法はデヴィッドの真骨頂。言葉数を抑えた反復と、メロディの上昇・下降がため息のようなニュアンスを生み、聴き手の共感を呼ぶ。歌詞の全文はここでは扱わないが、核心は“相手がいてこそ家はホームになる”という普遍的な命題である。
歴史的背景
1960年代、バカラック&デヴィッドはワーウィックとの黄金トリオで数多くのヒットを放った。本作もその流れに位置づけられ、映画音楽として生まれながら、ポップ・チャートでも存在感を示した。ジャズやソウルの表現語法を穏やかに取り込み、洗練と大衆性を両立させた点が当時の音楽潮流と響き合い、ラジオやクラブで長く愛聴されるスタンダードへと育っていく。
有名な演奏・映画での使用
最も広く参照されるのはディオンヌ・ワーウィックのヴァージョンで、柔らかいビブラートと明瞭な発音が歌の叙情を際立たせる。映画『A House Is Not a Home』(1964年)ではブルック・ベントンが主題歌として歌唱。以降、数多くの歌手がカバーし、特にルーサー・ヴァンドロスの解釈はソウル・バラードの金字塔として評価が高い。さらに、ヴァンドロス版のフレーズはTwista feat. Kanye West「Slow Jamz」(2003年)でサンプリングされ、新世代のリスナーにも楽曲名が浸透した。
現代における評価と影響
今日では、失恋や和解をテーマにしたプレイリストの定番曲としてストリーミングでも継続的に聴かれている。音楽理論の観点では、転調感の演出やテンションの扱い、ブリッジでのダイナミクス設計が教材として取り上げられることも多い。世代やジャンルを超えて再解釈できる“開かれたバラード”としての価値が支持を集める。
まとめ
映画発のポップ・バラードでありながら、私的な感情を普遍化した名曲。「家」と「ホーム」をめぐる言葉の精妙さと、メロディの気品が時代を越えて響き続けている。初めて聴くならワーウィック、ソウルの深みを味わうならヴァンドロスという二つの入口から、その奥行きを探ってほしい。