I'm Gonna Go Fishin'
- 作曲: ELLINGTON DUKE

I'm Gonna Go Fishin' - 楽譜サンプル
I'm Gonna Go Fishin'|楽曲の特徴と歴史
基本情報
デューク・エリントン作曲の「I'm Gonna Go Fishin'」は、映画『或る殺人(Anatomy of a Murder, 1959)』のスコア由来の主題を土台に、翌年ペギー・リーが歌詞を付けて発表されたジャズ・スタンダード。ビッグバンドから小編成、ボーカルからインストまで幅広く演奏され、スイング期以降のエリントン作品の中でも親しみやすさと骨太さを併せ持つ一曲として知られる。
音楽的特徴と演奏スタイル
音楽的には、ブルース・フィーリングを湛えた力強いリフと、軽快なスイング・グルーヴが核。メロディはブルーノートを交えつつ躍動的に進み、リズム・セクションはウォーキング・ベースとシャッフル寄りのドライブで推進する解釈が多い。ソロはリフのモチーフを発展させる形で展開され、コール&レスポンスやブレイクを効果的に挿入すると曲の魅力が際立つ。ボーカル版では“釣り”の比喩を用いた洒脱な語り口がリズムと密接に絡み、歌唱者のフレージングとスキャットの妙が聴きどころ。テンポ設定は中速からアップまで柔軟で、ジャム・セッションでも扱いやすい。
歴史的背景
背景には、オットー・プレミンジャー監督作『或る殺人』のためにエリントン(共作にビリー・ストレイホーン)が手がけた映画音楽がある。劇中で用いられた主題の一部が発展し、1960年にペギー・リーが歌詞を付けてレコード化。映画のクールで都会的なムードと、エリントン楽団の洗練されたハーモニー語法が曲のキャラクターを規定し、その後は独立したステージ・レパートリーとして定着した。
有名な演奏・録音
代表的録音としては、ペギー・リーによる1960年のシングルが出発点となり、デューク・エリントン楽団のインストゥルメンタル・バージョンも広く親しまれている。さらに、ニーナ・シモンのアーシーでダークな解釈は楽曲の多面性を示し、以降も多くのジャズ・ボーカリストやコンボが取り上げてきた。各録音は編成やテンポ、ブラスの書法、リズム解釈の違いが聴き比べの要点となる。
現代における評価と影響
現代では、教材曲やライブのセットで重宝される一方、映画音楽とスタンダードの橋渡しを示す好例としても評価が高い。スイングやストレートアヘッド、時にファンキーなビートにも馴染み、アレンジャーにとってもリフの再配置やホーン・ボイシングの工夫がしやすい素材である。歌詞付き・インスト双方で成立する汎用性が、長期的な演奏頻度を支えている。
まとめ
映画由来のテーマにジャズの語法を凝縮した「I'm Gonna Go Fishin'」は、親しみやすさと即興性の器の大きさが魅力。初学者から上級者まで挑戦しがいのあるレパートリーとして、今後もステージや録音で息長く愛され続けるだろう。