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Cheese Cake
- 作曲: GORDON DEXTER

Cheese Cake - 楽譜サンプル
Cheese Cake|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Cheese Cakeは、テナー・サックス奏者デクスター・ゴードン(作曲表記:GORDON DEXTER)によるインストゥルメンタルのジャズ曲。初出は1962年、Blue Noteレーベルのアルバム『Go!』で、メンバーはデクスター・ゴードン(ts)、ソニー・クラーク(p)、ブッチ・ウォーレン(b)、ビリー・ヒギンズ(ds)。録音はニュージャージー州のVan Gelder Studioで行われ、エンジニアはRudy Van Gelder、プロデュースはAlfred Lion。歌詞は存在せず、ライブでも頻繁に取り上げられる代表曲である。
音楽的特徴と演奏スタイル
耳に残るリフを核にしたテーマと、ハードバップの語法に根差した明快なスウィング感が最大の魅力。ゴードンの太く伸びやかな音色と、歌心に富むフレージングがアドリブ全体を牽引する。ソニー・クラークは軽やかなタッチと的確なコンピングで対話的なソロを構築し、ブッチ・ウォーレンの堅実なウォーキング・ベース、ビリー・ヒギンズの推進力あるライド・シンバルがグルーヴを支える。ブルース的なフィーリングを随所に湛えつつ、明快なコード進行上でコール&レスポンス的なモチーフ展開が映える、演奏者にも聴き手にも開放的な設計のナンバーだ。
歴史的背景
1960年代初頭、デクスター・ゴードンはBlue Noteで精力的に録音し、キャリアの重要な転機を迎えた。『Go!』はその象徴的成果で、Cheese Cakeはアルバムの幕開けを飾る1曲として位置付けられる。ヴァン・ゲルダー・スタジオの鮮明な音像、ライオンのプロデュースによる集中度の高いセッション体制が、曲の鮮烈さを後押しした。以後ゴードンはヨーロッパでも活動を広げ、本曲もそのレパートリーの中核として長く愛奏されることになる。
有名な演奏・録音
決定的なリファレンスは、やはり1962年の『Go!』収録テイク。ゴードンのソロ運び、クラークのコンピングとソロの流麗さ、リズム・セクションの推進力が理想的に結晶している。以後、ゴードン自身の各種ライブ録音でもしばしば演奏され、その都度テンポ感やモチーフ展開に違った表情が生まれた。スタンダード化に伴い、多くのテナー奏者や小編成コンボが取り上げており、セッション現場でも定番として定着している。個別のカバーの網羅は情報不明だが、原曲の鮮烈なテーマ性が幅広い演奏解釈を可能にしている点は確かだ。
現代における評価と影響
Cheese Cakeは、ハードバップ期の洗練された作曲と即興のダイナミクスを学ぶ好例として、教育現場でも扱われることがある。耳に残るテーマ、ソロへの橋渡しの自然さ、アンサンブルの呼吸の取り方など、実践的な指標を多く提供するためだ。配信時代においても『Go!』のテイクは新規リスナーの入口として機能し、ゴードンの代表曲として揺るぎない評価を得ている。
まとめ
リフ主体のキャッチーさと、濃密なスウィング感を併せ持つCheese Cakeは、デクスター・ゴードンの美学を端的に示す名曲である。1962年のBlue Note録音を起点に、ライブ現場と後続世代の演奏者によって息長く磨かれ、今日ではジャズ・スタンダードとして広く共有されている。入門にも鑑賞にも適した、時代と国境を越える一曲だ。