Memphis In June
- 作曲: CARMICHAEL HOAGY,WEBSTER PAUL FRANCIS

Memphis In June - 楽譜サンプル
Memphis In June|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Memphis In Juneは、作曲家ホーギー・カーマイケルと作詞家ポール・フランシス・ウェブスターによる歌曲。発表年や初演者は情報不明だが、アメリカ南部の初夏を描く絵画的な歌詞と、温かなメロディで親しまれ、ジャズ・スタンダードの一角として歌手・器楽奏者の双方に取り上げられている。タイトル通り、テネシー州メンフィスの季節感や街の空気を示唆する内容で、聴き手に情景が立ち上がるタイプの楽曲である。
音楽的特徴と演奏スタイル
中庸からややスローのテンポで演奏されることが多く、カーマイケルらしい流麗な旋律線と、ジャズに適した機能的なハーモニー進行が魅力。冒頭にピアノのルバートを置き、その後スウィングへ移行するアレンジも定番で、ヴォーカルはレガート主体のフレージングが映える。コードはセカンダリー・ドミナントや分数コードを活用した柔らかな色彩感が特徴で、ギターやヴィブラフォンを加えた室内的編成でも、大編成でも対応しやすい。
歴史的背景
カーマイケルは「スターダスト」「ジョージア・オン・マイ・マインド」などで知られる20世紀アメリカを代表する作曲家。ウェブスターは後年「愛は素晴らしき哉」など映画音楽の名作詞で名を馳せた。本作は両者のコラボレーションにより、南部の風物や日常の情緒を品よく切り取った作風に結実している。初出媒体や出版年、初録音については情報不明だが、戦後以降のアメリカン・ソングブック系レパートリーとして受容が進んだ。
有名な演奏・録音
Nina Simoneの録音(1961年『Forbidden Fruit』収録)は、しっとりとしたテンポと深い表現で名演として知られる。ほかにも多くのジャズ・ヴォーカリストやピアニストが取り上げ、クラブやホールのライブで定番化。作曲者自身の確実な代表的録音の有無は情報不明だが、歌伴・小編成ジャズのレパートリーとして継続的に録音されている。映画やテレビでの顕著な使用についても情報不明である。
現代における評価と影響
華美すぎない旋律と、風景を呼び起こす歌詞の力で、季節感や土地のムードを演出したいステージに好んで選ばれる。テンポやキーの融通が利き、歌手の個性を活かせるため、レパートリー拡張を目指すヴォーカリストにも重宝される楽曲である。配信時代においても、プレイリストの文脈で“南部”“初夏”“くつろぎ”といったキーワードと親和性が高く、長く聴かれ続けている。
まとめ
Memphis In Juneは、南部の初夏を繊細に描く歌詞と温かなハーモニーが一体となったジャズ・スタンダード。詳細な初出情報は不明ながら、演奏現場での実用性と多様な解釈の余地により、今も歌い継がれている。静けさと豊かさを併せ持つこの曲は、聴き手に情景を届ける“語り”の力を備えた名品と言える。