Screamin' The Blues
- 作曲: NELSON OLIVER E
Screamin' The Blues - 楽譜サンプル
Screamin' The Blues｜楽曲の特徴と歴史
基本情報
Screamin’ The Bluesは、サックス奏者・作曲家オリヴァー・ネルソン（表記: NELSON OLIVER E）が手がけたジャズ作品。初出は1960年録音の同名アルバム（レーベル: New Jazz／Prestige系）で、ネルソンの作編曲家としての手腕を端的に示す代表曲として知られる。歌詞を持たないインストゥルメンタルで、ブルースを基盤にしつつも洗練されたアレンジが施され、スタジオ小編成での演奏に適した構造を持つ。
音楽的特徴と演奏スタイル
楽曲はブルースの語彙を核に、ホーンのユニゾン／ハーモナイズド・リフが印象的なヘッドを形成。シンプルなコール＆レスポンスの対比と、各ソロイストに十分なスペースを与えるフォーマットが特徴で、アドリブではブルース・フレーズとビバップ以降の拡張和声が自然に交錯する。テンポは中庸からやや速めのレンジで取り上げられることが多く、芯のあるスウィングと明確なグルーヴを要求。アンサンブルでは音量のダイナミクス、ソロではコーラスごとの物語性づくりが聴きどころとなる。
歴史的背景
1960年前後のネルソンは、ハード・バップからポスト・バップへの過渡期において、ブルースを知的に再構成する書法を確立しつつあった。Screamin’ The Bluesは、その指向を端的に示す一曲であり、翌年の「The Blues and the Abstract Truth」へと連なる作家性の地盤を確認できる。録音現場はPrestige系の小編成セッションで、当時のニューヨーク・ジャズ・シーンが持つ即興性と機動力を色濃く伝える。
有名な演奏・録音
最も知られるのは、1960年の初出アルバム『Screamin’ The Blues』収録の演奏。参加メンバーとして、オリヴァー・ネルソン（sax）、エリック・ドルフィー（sax, b-cl）、リチャード・ウィリアムズ（tp）、リチャード・ワイアンズ（p）、ジョージ・デュヴィヴィエ（b）、ロイ・ヘインズ（ds）が名を連ね、鋭いリフと先鋭的ソロが緊張感のある対話を生む。これ以外の著名カバーについては情報不明だが、原盤の完成度は現在も高く評価される。
現代における評価と影響
本作は、ブルース・フォームに緻密な管楽器のボイシングを融合したネルソン流アレンジの好例として位置づけられる。リフ型ヘッドの強度、ソロの展開余地、セクション間のコントラストなど、小編成ジャズ作編曲の教材的価値が指摘されることもある。録音の鮮烈さと構成の明晰さは、現代のリスナーにとってもアクセスしやすく、ジャズ入門から上級の分析的鑑賞まで幅広く対応しうる。
まとめ
Screamin’ The Bluesは、ブルースの骨格とモダンなアレンジが緊密に結びついた一曲。ネルソンの作家性、同時代の先鋭的演奏家たちの個性、そして録音全体の推進力が相乗して、今なお瑞々しい聴感を保つ。まずは初出盤の演奏から、その構造美と即興の切れ味を体感すると良いだろう。