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The Tokyo Blues

  • 作曲: SILVER HORACE
#ラテン#スタンダードジャズ
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The Tokyo Blues - 楽譜サンプル

The Tokyo Blues|楽曲の特徴と歴史

基本情報

The Tokyo Bluesは、ジャズ・ピアニスト/作曲家ホレス・シルヴァーによるインストゥルメンタル曲。ブルーノート・レーベルから発表された同名アルバム『The Tokyo Blues』に収録され、ハード・バップ期の代表的レパートリーの一つとして知られる。作曲者本人のクインテット演奏で広く定着し、歌詞付きでの流通は確認されていないため、歌詞は情報不明。リズム・セクションの堅牢なグルーヴと、耳に残るテーマを軸に、ジャズ・クラブや教育現場でも取り上げられる機会が多い。

音楽的特徴と演奏スタイル

基調はブルースの語法で、シンプルかつ印象的なリフによりテーマが立ち上がる。ホーンによるユニゾン/ハーモナイズのコール&レスポンス、シルヴァー特有のゴスペル感とファンキーなピアノ・コンピング、推進力あるウォーキング・ベースとスウィングするドラムが一体化し、堅実なハード・バップの旨味を形成。旋律にはペンタトニック由来の色合いが差し込まれ、タイトルが示す異国情緒を軽やかに喚起する。ソロはモチーフ展開が要で、過度に饒舌にならず骨太なフレージングでグルーヴを前進させるのが定石だ。

歴史的背景

1960年代初頭のブルーノートは、ハード・バップが円熟に向かう中で作編曲の精度を高め、アルバム単位のコンセプト性も重視していた。The Tokyo Bluesは、その流れの中で生まれた作品で、シルヴァーが得意とするブルース感覚に、作品世界としての日本的モチーフを織り込んだ点が特徴的である。アルバム全体が統一感ある語彙でまとめられており、タイトル曲もコンセプトの核として機能している。

有名な演奏・録音

基準となるのは、ホレス・シルヴァー・クインテットによるオリジナル録音である。タイトなアンサンブルと明快なテーマ提示、堅実なソロ運びが、以後の演奏解釈の土台を形づくった。以降もシルヴァー自身のライヴ音源や、各国のコンボによるカヴァーが継続的に発表され、特に日本のジャズ・シーンでもレパートリーとして定着。編成はクインテット(tp/ts/p/b/ds)が標準だが、ピアノ・トリオやサックス・カルテット編成でのアレンジも行われている。

現代における評価と影響

The Tokyo Bluesは、明快なテーマと堅牢なグルーヴ設計により、学習者から熟練奏者まで取り上げやすい楽曲として評価される。アドリブではブルース語彙を核に、ペンタトニックやシンプルなモチーフ展開でストーリーを築く練習素材としても有用だ。ストリーミングやリイシューによってアクセスが容易になり、ハード・バップの作曲美学を学ぶ格好の入り口として再評価が進む一方、シルヴァー作品群の多面性を示す一章として位置づけられている。

まとめ

The Tokyo Bluesは、ハード・バップの堅固な枠組みに、記憶に残る旋律と軽やかな異国趣味を溶け込ませた佳曲である。オリジナル録音は解釈の羅針盤となり、現代でも演奏・学習の双方で価値を持ち続ける。ブルースの語法を起点に、コンボのアンサンブル設計と作曲的視点の重要性を教えてくれる一曲だ。