Fantasy in D (Ugetsu)
- 作曲: WALTON CEDAR ANTHONY

Fantasy in D (Ugetsu) - 楽譜サンプル
Fantasy in D (Ugetsu)|楽曲の特徴と歴史
基本情報
Fantasy in D (Ugetsu) は、ピアニストのCedar Walton(表記:WALTON CEDAR ANTHONY)によるインストゥルメンタルのジャズ曲。通称「Ugetsu」としても広く知られ、2つのタイトルが併用されます。初出の録音は1963年、Art Blakey & the Jazz Messengers がニューヨークのバードランドで収録し、アルバム『Ugetsu』(Riverside)に収められました。歌詞付きの公式バージョンは確認されておらず、スタンダードとして器楽演奏が中心です。調性はDを中心としたマイナー感が特徴で、小編成コンボでの演奏に適した書法がとられています。
音楽的特徴と演奏スタイル
旋律は流麗で抒情性が高く、ホーンのユニゾン/ハーモニーで映える書き方が施されています。ハーモニーはマイナー基調にモーダルな色合いが交差し、内声の動きやツー・ファイブ進行を織り交ぜながら、緊張と弛緩を明快に描きます。テンポは中速域で扱われることが多く、ソロはモチーフの展開や音域のコントラストを活かすと効果的。ヘッド—ソロ—ヘッドというオーソドックスな構成に、イントロ/コーダの工夫で個性を出す演奏も聞かれます。ピアノの分散和音やシェル・ボイシング、ホーンのレガート・フレージングなど、ウォルトンらしい端正さが要所に現れます。
歴史的背景
1963年当時、Art Blakey & the Jazz Messengers はハード・バップ以降の語法を発展させ、ライヴの現場で新作を次々と磨き上げていました。その中でCedar Waltonの書いた本曲は、メッセンジャーズのレパートリーとして定着。アルバム題名にも採られた「Ugetsu」という呼称の由来については資料により説明が異なり、確定的情報は情報不明です。いずれにせよ、クラブ・シーンに根差した創作とライヴ実践の密接さが、この曲の魅力を初期から支えました。
有名な演奏・録音
基準となる音源は、Riversideから発表されたArt Blakey & the Jazz Messengers『Ugetsu』(1963, Birdlandでのライヴ)。ここでの演奏は、テーマ提示の明快さとソロの展開力、ダイナミクスの対比が高く評価されています。以後、ジャズ・コンボの定番レパートリーとして多数の演奏・録音が存在しますが、年代や参加ミュージシャンの詳細は網羅的な一覧が情報不明のため、本稿では特定の追加音源の列挙は控えます。
現代における評価と影響
本曲は、メロディの親しみやすさと和声運びの端正さから、学生からプロまで幅広く演奏されるジャズ標準曲として認知されています。アドリブの練習素材としても有用で、モーダルなアプローチと機能和声的フレージングの両面を学べる点が評価の理由です。作編曲家Cedar Waltonの作法—旋律・和声・フォームの均衡感—を体現する代表作の一つとして、今日もコンサートやセッションで継続的に取り上げられています。
まとめ
Fantasy in D (Ugetsu) は、1963年の名演を起点にスタンダード化したCedar Walton作の重要曲。抒情的なテーマと洗練された和声、ライヴで映える構造が長く支持されてきました。由来名の詳細など一部は情報不明ながら、実演の蓄積が価値を裏づけており、今後もジャズの現場で息長く演奏される一曲と言えます。